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「あ、大事な事忘れてた」そう言うと美玖はスーツから何かを取り出し桜愛の薬指にそっとそれを通した。
「桜愛、俺とずっと一緒にいて」
「え?」
「桜愛の季節を今度こそずっと一緒に過ごしたい。結婚して」
高級そうなスーツを纏った彼があまりにも眩し過ぎて、桜愛はどうしていいか分からなくなった。
だって、今、自分の姿と言ったら服は部屋着で頭は帽子でごまかしてるが整えてもいないし、何より目は腫れてスッピンな自分。
急に猛烈に恥ずかしくなり慌てて両手で顔を隠した。
「あれ?桜愛?あ、もしかしてまた俺やっちゃった?」
「先走りすぎた?でも、もう俺無理だよ。桜愛と離れているの限界。」美玖は桜愛の頭に頬を擦り付けギューギュー抱きしめてくる。
ふと、朝のスクープ5文字が頭に浮かび「美玖、誰かと結婚するんじゃなかったの?」と問いかけた。
「ん?うん。するよ桜愛と」
「え?」
「だって俺、桜愛と別れたつもりないし、ずっと好きだったから」
だから、桜愛が居なくなってからずっと探してた。東京では見つからなくて、だったら地元じゃないかって思って、2年前くらいからはこっちを中心で探してたんだ。と美玖は言う。
そんなに長い間、何で?
いつの間にか桜愛の頬から流れてる涙を拭いながら「俺、桜愛じゃないとダメだから。ずっと一緒にいてよ。お願い桜愛」
美玖の強い眼差しに桜愛はただ頷いた。
うん。ずっと一緒にいたい。
そう呟いて。
「良かった〜!スーツ着て指輪まで用意して無様に振られたらどうしようかと焦った」
「もし私に恋人いたらどうしてたの?」
「そん時は掻っ攫って逃げたかな」
そう言いながら美玖は繋がれた手を離し、自分の左手と桜愛の左手を重ねて桜の木をバックに携帯で写真を撮った。
画像には同じ指輪が嵌められた2人の手が写り込んでいる。
美玖は携帯をスルスルと操作し「よしっ」と言うと「桜愛もう逃げらんないからね」と笑った。
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