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「なぁ安永、今度一緒に映画観に行かん?」
「えっ… いいんですか」
成瀬先輩から突然誘われた安永冴子は、戸惑っていた。なぜなら、成瀬先輩は、美沙先輩と付き合っていたはずだからだ。
だが、冴子はそのことを聞けずにいた。
冴子は成瀬先輩がほんのり好きだったからだ。
聞いてしまったら、このデートがなくなってしまいそうで。
少し考えて、
「いいですね、いきましょう」
と冴子は答えた。
同じサークルの、仲の良い先輩と後輩が映画を見に行くなんて、普通じゃないか。
成瀬先輩にも、彼女には吐き出せない事情があるのだろう。
ただの後輩として、息抜きに付き合ってあげよう。
美沙先輩に話したら、余計に拗れて別れるようなことになるかもしれない。
二人には別れてほしくない。
それっぽい理屈をこねつつ、
こうして秘密のデートが始まった。
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