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「ごちそうさまでした!!」
どれほど経っただろう。
テーブルには空の皿が積み重なっている。もはや一日の食事分を優に越えているんじゃないかってほどには、たくさん食べた。
「美味しかったぁ」
「ふふ、ムジナってば本当にプチトマトが気に入ったのね」
「うん!黒池に送ってもらお!えへへー、楽しみだなー」
ムジナは麦茶を飲みながらニコニコとしている。
オレは……お腹いっぱいすぎてヤバい……。よくプチトマトの話なんかできるなぁ……。いや、美味しいけどさ!
「ムジナくんは泊まっていくのかい?」
「ううん。お兄ちゃんが待ってるから帰らないと!」
「おや、じゃあこっちのお兄さんにレシピでも渡しておこう。ムジナくんのお兄さんに作ってあげてね」
おばさんはバルディに四つ折りにした紙を渡す。そこには、さっきまで食べていたもののレシピが書かれていた。
「これは……!いいんですか?!」
「ムジナくんのお兄さんは噂に聞く死神王なんでしょう?護ってもらうために日本酒を渡しに行っているようだから、日本酒に合うもののレシピも書いておいたよ」
おばさんの話を聞いたバルディは驚き、レシピをポケットに入れ、口を開いた。
「……ヘッジ様のこと、ご存知だったんですね」
「いい人ってことで有名ですからねぇ。それに、こんなにかわいい弟くんがいるのなら尚更だよ」
おばさんはムジナの頭を撫でる。オレよりまだ幼いムジナはうとうとし始めた。
……言われてみればかわいいかもな。
あと、同じぐらいの年齢のヘラ……あいつの精神年齢、すごい高いんだな。今度あまり無理すんなって言ってやらねぇとな。
……ってことはヘラもこの場にいたらムジナと同じようにうとうとしてたのか?ははっ……!イメージしにくいけど、それはそれでなかなか面白い結果だったかもな。
「では、私たちはここで。暗くならないうちにお暇します」
「気をつけてね」
「はい」
バルディはムジナをお姫様だっこし、起こさないようにドラゴンのような翼を広げて星空の方へ飛んでいった。おんぶにすると翼を広げられないってのはわかるけど、もうちょっと何とかならないのか?
……それはそうとして、悪魔がこうやって空を飛んでいるのは、人間界やアメルではなかなか見られない光景だ。これを見られるのも、スクーレがオレたちと交友関係を結んだからだ。
「──今日はありがとうございました!みんなに喜んでもらえましたね」
スクーレはおばさんに頭を下げた。
「えぇ。悪魔でも良い子ばっかりで嬉しいわ。こっちもさっきの二人みたいに暗くならないうちに帰らないとね」
「はい!お気をつけて!ほら、レインも!」
「あ、あぁ。ありがとうございました!美味しかったです!」
おばさんは微笑んだあと、スクーレの家から出ていった。残ったのはオレとスクーレだけだ。ま、たまにはこういうのもいいかもな。
オレたちはおばさんが帰ったあと、さっさと片付けをし、疲れたので床に就いた。
オレの場合は、お腹いっぱいで一刻も早く寝たかったからである。
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