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どこかのドアが開く。
中の様子が少し見えた。
ピンクの髪の女の子がいる。
でも前にいる人間が邪魔だ。
体が疼く。
──早く。早く早く早くはやくはやくハヤク!!
獲物が見えればもう自我は無い。
ワタシはその人間に近づいた。
できるだけ殺気を抑えて。
できるだけおしとやかに。
「あら、お人形みたいね。あなたも悪魔?こんなに遅くに危ないわよ」
……お兄ちゃんはどこ?お兄ちゃん、お兄ちゃん……。
──この人は、お兄ちゃんじゃない。
むしろお姉ちゃん。
ワタシはその人間の顔を見る。
目の前の人間の顔はどんどん青ざめていった。
「ひっ……?!目が……ボタン?!しかも口が縫われて──」
「ぎゃははは!先にやっちまうぜ!」
「あ、ずりーよ!なぁ、『デストロイヤー』!次はこっちに回せよな、なぁ!」
「……ん」
「な、何!?待って、何を────」
「キャー!!!」
目の前に鮮やかな赤が広がる。
自分より大きな人間は鮮血を飛び散らせて『化け物さん』の餌食になった。
──もっともっとたくさん殺さなきゃ。お兄ちゃん……どこ?
ワタシが歩き出そうとしたその時。さっきの人間の悲鳴を聞きつけた野次馬たちがワラワラと出てきた。
「何だ何だ?」
「悪魔……悪魔だ!」
「どっか行け!」
各々叫ぶ。
やはり人間は悪魔のことが嫌いらしい。
その中にはさっき見たピンクの髪の女の子がおろおろとしていた。
「ねぇ……みんな家に戻ってよ……!悪魔は悪くないわ!」
「いや、スクーレちゃん。悪魔は人殺しだ。そこを見てみろ!」
「……っ!!」
スクーレ、と呼ばれた女の子は口を塞ぐ。すると家の奥から出てきた金髪の男の人がスクーレに話しかけた。
「……そういうことか。スクーレ、家に入ってろ。ここはオレがやる」
「で、でもっ……今は……」
「大丈夫。オレがあいつと戦えばみんなわかってくれるはずだ。いつだってそうだろう?」
「……無理はしないでね」
スクーレは観念したのかその男の人と入れ違いに家に入っていった。
人を掻き分け、前に出てきたその男の人をよく見る。
ワタシは、確信した。
──お兄ちゃん!
金色の髪。黒いメッシュ。
あれが──ずっと会いたかった、愛する家族────!
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