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青い空、白い雲。
……そして目の前にあるのは……。
「あぁ……あと何粒飲めばいいんだろうか……」
『記憶喪失、不安定患者用の薬』や『痛み止め』と書かれた小さめの白い紙袋だ。
どうしてピクニックに来てまでこんなもの飲まないといけないのか。オレは目の前でニコニコしながら水筒を持つ弟に聞いた。
「あと三粒。頑張って、お兄ちゃん」
「いや、飲めるんだよ?飲めるんだけど、一気に飲んだらダメとか意味わかんないんですけど。あとでかいんですけど」
「そこはなんとか頑張って!」
弟は微笑みながら拳を握る。
「いやいやいや!!悪魔用とか言って渡してきた医者側に問題があると思うんだけど!何?!喉は伸縮自在のゴムでできてるとか思ってるわけぇ?!」
オレはあの気に食わない医者の顔を思い出しながら叫んだ。どう見ても喉に入らないやつだよ!てか今までよく二粒ぐらい飲んできたな、オレ!
「まぁまぁ。それの効果はテキメンなんだから、我慢して!」
「……そもそもだ。お前がオススメした病院だぞ?本当にあそこ信頼してんのか?サニー?」
「うん。黒池さんが一回入院してたとこだから。忍び込むのは簡単だったけど」
「その時点で警備ガバガバじゃねーか!!」
ありえん。そんなとこの薬なんか飲んでられっか。……はぁ、急にアホらしくなってきた。正直にこんなデカい薬を飲もうと思ったオレが悪かったよ。……デカいって言っても爪の半分ぐらいだけどさ。
「でもお兄ちゃんは僕の呪術で治せないから……マイナスな点は全部受けるのに」
「何でだろうな」
「知らないよ……。とにかく飲んじゃって」
「はーい」
そんなこんなで薬を飲んでいると、遠くから戦闘音が聞こえてきた。
「……お兄ちゃん、またどっかで戦ってるみたいだね」
「そうだな……行ってみるか?」
「うん!」
オレたちはまずピクニックの用意を片付け、異次元に押し込んだ。もちろん薬は全て飲み終わったあとだ。……ちょっと、まさかオレがサボろうとしたとか、そんなことを思ったんじゃないだろうな!?
……こほん。ここはアメル付近の丘。なので人間たちが多いのだが、スクーレがいるので許してもらっている。オレ的には魔界の中でここが一番のお気に入りだ。近くに花畑もあるし、太陽は暖かい。
オレは骨折が治り次第ここに来たかった。それが今日、叶ったんだ!
「……あ、ヘラ!……と何だ?あの剣」
丘を下り、林の中に入ると、開けた場所でヘラが黒い剣を振っていた。
「こんにちは」
サニーが一歩前に出る。するとヘラはこちらを見た。
「ん?あぁ、レインとサニーか。こんにちは。骨折、治ったんだな」
ヘラは腕や足などを見て、オレが歩けていることを確認し、満足そうな顔をした。
「おかげさまでね」
「とにかく二人が仲良くしているのはめでたいことだ。そうだな……何かしてやりたいな」
ヘラが剣を腰に下げ、腕を組んで考え込んだ。
「いやいや、いいよそんな。あ、そういや剣変えたの?」
ヘラの剣が変わっている。前はギザギザの刃以外はそこまで変な剣じゃなかったのに、今は……なんというか、黒くて赤くて……普通じゃない。
「あぁ……。こいつがヨジャメーヌをぶっ壊したんだよ」
「えぇ?!」
ヘラが自らヨジャメーヌを壊すはずがない。オレとサニーは急いで今地面に刺さっている、その……ヨジャメーヌを壊したという剣を見た。
呪い系は感じない。どうやらヘラが操られている訳ではないらしい。なのでヘラ自身がこの剣を持っていることになっているのだろう。
……と、視界の隅で何かが動く。
剣が──動いている?
んなアホな。オレは目を擦ってもう一度見たが、やはり動いている。ひとりでにベルトから逃れている。なんだこれは!
「お、お兄ちゃん……剣……動いてる……」
サニーも気付いているようだ。……嘘だろ?
「こいつは『廻貌』。気に食わない奴だけど、今は相棒だ」
「へー、ヘラっていつも名前つけるよな」
そう呟きながら触ろうとすると、そいつは勝手にぐるりと回り、刃をこちらに向けた。
「レイン、危ない!」
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