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三
小さな町とあって、夜中にうろつく人はいなかったが、万が一にも見つからないよう、森奥深くにとんでいった。
あたりで一番、幹が太く、背の高い木を見つけ、上のほうの平たい枝に腰を落ちつけて。
それまで、照明代わりに自ら発光していたのを、最小限に明るさを落とす。
真っ暗闇でしたくなかったが、照らされるのを、まじまじと見たくもなかったから。
排泄に慣れたといって、妖精の自慰はまだ別物。
ファンタジーにまだ夢を見る俺には、許容できず。
「まあいい。さっさと済ませよう」と薄目にあさってのほうを見ながら、ズボンと下着をずり落として、剥きだしのに手を当てる。
はじめから両手で強く扱いて「は、あ・・・」と熱い吐息をしつつ、今一、気分が乗らない。
「そうか、なにか想像して」と思って記憶を掘り起こすも、ちょうどいい画像や映像が見つからない。
そりゃそうだ。
転生してから、女の妖精と遭遇していないし。
人の女は多く目にしてきたが、その尻を追っかける勇者の、その尻を怒鳴りながら追ってばかりで「あの子のおっぱいサイコ―」と鼻の下を伸ばす暇がなかったし。
脳裏に浮かぶのは、ロイドの百面相。
いやいや、まさか、ぶさいくな泣き顔に興奮したくなく、記憶を一掃して頭の中を空っぽにし、ひたすら扱くのに全集中。
すこしもせず先走りが滴ってきて、あんあんくちゅくちゅしながら手を早めたものを、そこからゴールに走りきれない。
湧きあがるマグマのような熱が、噴火しそうでしなく、ぎりぎりでとどまって、どれだけ扱いても一定以上、突きぬけなさそう。
「ぜんぜん萎えないからインポでもないし、妖精の体の構造は人とちがうのか?」
もどかしくありつつ、不安になってきたところ「あーれー?」と頭上からかけ声が。
見あげると、蛍のような小さい発光体が暗がりをゆらゆらと。
ぽかんとして、次の瞬間、足を閉じると「恥ずかしがっちゃってカワイー」と嘲笑。
「いくら奥ゆかしいたって、こんな闇の森でナオニ―するなんて、ホラーっていうか滑稽ていうか。
なになに?とことん一人寂しく扱かないと、逆に燃えない変態妖精?」
「まあ、そうイジワル云ってやんなよ。
ほら、こいつ、ちがう種族だろ。
たしか、魔王に目をつけられて、一族を滅ぼされた。
その生き残りじゃないのか?」
「ちがう種族」と聞いて、目を凝らせば、肌が黒ければ、白目のない真っ黒な瞳をした、どこか虫っぽい妖精。
一方で俺は肌が白く、人とほぼ同じ姿かたち。
こいつらフィナと別種で仲がワルイ、色黒妖精一族だと、漫画の内容を思い起こす。
フィナの一族は見た目や思考が人と似ていたから、多少、人と交流し友好関係に。
対して色黒妖精たちは、小バカにするようにイタズラばかりして、人にも妖精族にも疎んじられていた。
ただ、魔王の扱いは正反対。
「人と馴れ合うとは!」とフィナ一族を叩きつぶし、色黒妖精を野放し。
もともと親しくないうえ、そうやって命運が別れた間柄となれば、警戒せずにいられない。
相手をせずに、とっとと去りたいところだが、膨らみが固いまま濡れたままでは、どうしようもなく。
口をへの字にして身がまえ、しばし動向をうかがうことに。
俺が睨みつけるのを、屁でもなさそうに「へーあー、一族が全滅しちゃった生きのこりねえ!」と二匹はへらへらして、辺りをとび回ってぶんぶん。
「え、でも、じゃあ、一人でしてもダメじゃん!
どーいうことー?
変態妖精くんは達せないぎりぎりを、ずっと味わっていたいのー?」
下手に口を利くまいとしたのが「ダメじゃん!」に引っかかって「な、なにがダメなんだよ」と。
「はあ?ダメってそりゃあ!」と喚くのを手で遮って「もしかして・・・」ともう一匹がそばにより、顔を覗きこんだ。
「妖精が性転換するのを知らないのか?」
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