新たな出会い

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店内にいた客が徐々に少なくなってきた。 僕とシオンちゃんも店を出て、改札を抜けた。 「シオンちゃん、帰り大丈夫? 送っていく?」 別に下心なんてなく、ただ遅くなってしまったし心配になって聞いた。シオンちゃんは驚いた表情でブンブンと勢いよく首を振る。 「大丈夫ッス! そんな送ってもらうなんて…神と一線越えられないッスよ!」 「えっ、えっ!? 何それ、使い方間違ってない!?」 シオンちゃんの言う「一線」とはどの程度のレベルなんだろう。笑顔ではあるが逃げるように彼女はホームへと駆けて行った。 「…変わった子」 ポツリと呟いた後、自然と笑みが溢れた。 何だろう、弦と出会ってから急に世界が動き出したかのような気分だった。 *** それから数日後、弦からメッセージが届いた。 『明日そっちに行く』 僕はすぐさま返信した。 『長く居るの? うちに泊まっていいよ』 『いや、もうホテル予約した。滞在は3日間くらいかな』 やはり気を遣っているのか、少し距離を感じて残念な気持ちになった。 でも遠くから来て、狭くて布団もない部屋で寝るよりかホテルはずっと快適だろう。 『弦、また一緒にライブする?』 送った後、返事が来るまで少し不安になった。 スマホの前で待機するのを止めて、キッチンへ向かう。冷蔵庫を開けた瞬間にメッセージの受信を知らせる音が鳴った。 テーブルへ戻り、慌ててスマホを手に取ると、メラメラと背後に炎を背負ったクマのスタンプが届いていた。 そして追加のメッセージも届いた。 『いいね、やろう!』
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