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翌朝のさよなら
翌朝――。
外から鳴り響く車の防犯ブザーの音で目が覚めた。
スマホのアラームかと勘違いして、手に取り画面を見ると、すでに8時を回っていた。
昨夜は、結局少しのつもりが2時間近くカラオケ屋にいて、それから居酒屋に入り、グダグダになりながらアパートに着いたのだった。
テーブルの向こうでは、弦が薄手の毛布を腹に掛け寝ていた。敷布団が余分にないので、掛布団を代わりに敷いている。
僕はまだ寝足りないと思いつつも、ベッドから降り、朝早くに出ると言っていた弦を揺すり起こした。
「弦、もう8時過ぎちゃった…時間、平気?」
「ん〜…8時? あ〜…起きる」
「先に風呂いいよ。タオル適当に使って。僕、朝ご飯買ってくる」
「お〜…サンキュ」
ダルそうに起きた弦は、昨日の服のまま脱衣所へと入った。僕は部屋着のまま、アパートからすぐのコンビニへと向かった。
昨日帰り道に寄れば良かったのだが、二人共気分良く酔っていて朝ご飯のことなど、すっかり抜けていたのだ。
色々と話したくていたのに、彼の歌声をもう少し聴きたいと思って入ったカラオケで、当初の目的を忘れてしまった。
それくらい楽しかった。ただ歌い、聴き、バカ笑いする。それだけで良かった。
ミネラルウォーターとおにぎりや惣菜パンを適当に見繕って買った。相手が女の子ならサンドウィッチやヨーグルトなんかを買って行くけど、弦なら朝からラーメンでも良さそうな気がする。
「戻ったよ~」
サンダルを脱いで部屋へ入ると、すでに風呂から上がった弦がタオルでワシャワシャと髪を乾かしていた。
「ドライヤーあるけど使う?」
「いや、すぐ乾くし」
僕は買ってきた朝食をテーブルに乗せた。
弦は和食派なのか、おにぎりを選んだ。
昨日使い果たしたエネルギーは、そうすぐには回復しない。僕らはテレビのニュースをぼんやりと見ながら食べた。
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