翌朝のさよなら

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僕はそれからバイトの合間、作曲活動に勤しんだ。 弦が気に入ってくれていたあの曲も2番まで増やし、歌詞も作ることにした。 あの時、デタラメの英語で歌い上げたカッコ良さが忘れられず、調べながら英語の歌詞を付けた。 僕の頭の中では、その新しい歌詞を弦が歌っている。次々と浮かぶ曲のボーカルは、弦以外に考えられなくなっていた。 弦とは頻繁に連絡をとることはなかったけど、新曲を書き上げた時は、どうしても知らせたくてメッセージを送った。 彼は想像通りマメなタイプではない。 既読がつくのが翌日になるのは、よくあることだった。 『新曲できた』 その後に続く「聴いて欲しい」という言葉は隠して、それだけを送った。 翌日には、変なスタンプと共に彼らしいメッセージが添えられる。 『マジか! 聴きて〜!』 彼が地元で何をして、そしてなぜこちらへ来ていたのか…いつまでも聞けずじまいだった。 何となく忙しそうに思えたし、あまり興味津々にしても気持ちが悪い。 会った時、そういう話題になったら自然と知れるだろうと思った。 しばらくしてから、新曲と弦が歌ってくれた曲の完成品を動画にしたものを送った。 返事はまた明日かなと思いながらスマホから離れると、今回はすぐにメッセージが届いた。 『歌詞もある? 見たい』 僕は嬉しくなって、すぐに歌詞を送った。 弦が歌ってくれるかは別にしても、興味を持ってもらえたことに心が満たされた。
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