新たな出会い

2/4
前へ
/46ページ
次へ
「いやぁ、有り難いけど…神はちょっと…」 「えっ、じゃあ…何てお呼びしたらいいッスか!?」 いつまでもキラキラとした目で見つめられると、正直照れる。悪い気はしない。 「響一っていうんで、それで…」 「キョーイチさんッスね! 最強じゃないッスか!」 ちょっと何言ってるか分からない…僕と彼女の感覚はいつまでも交わらないような気がした。 「君の名前は?」 「自分、天笠(あまがさ)詩音(しおん)ッス。シオンでいいッスよ」 「へぇ~、シオンちゃん…可愛い名前だね」 僕が名前を褒めるとシオンちゃんは、急に俯いてモジモジとし始めた。 「か、可愛いッスか? えへへ…」 名前を褒めただけなんだけどな…とは思いつつも、しおらしくなった態度に微笑ましくなった。 「シオンちゃん、もし良かったら連絡先交換しない? そこまで熱心に応援してくれるのは君ぐらいだし…またライブやる時は連絡させてもらうよ」 「うぇ〜!? マジッスか! 嬉しい、ありがとうございます!」 刺々しい服装とは反対に、まるで少女のように純粋に嬉しそうなシオンちゃんに、僕はすぐ心を解くことが出来た。 「キョーイチさん、SNSとかやってないッスよね? どこ探しても見つけられなくて…何ていうか、珍しいッスね」 「うん…ちょっと、苦手でね」 ストリートミュージシャンを始めた頃は、意気揚々と自身の宣伝をしたり、ピアノ演奏の動画をアップしたりしていた。 注目されることへの興奮と喜びしかなかった。 だけど次第に悪意のあるコメントが増えてきて、それからは心折れて全て辞めにしてしまったのだ。 今はそれなりにネットの闇も理解し、上手く(かわ)せる術も身につけた気はするけれど、やはり気が進まなかった。 生身の人間の前で、生の反応を見る。 野次が飛ぶこともあるけれど、それらは音楽が掻き消してくれた。
/46ページ

最初のコメントを投稿しよう!

23人が本棚に入れています
本棚に追加