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ライブへ向けて
弦とやり取りする中で、滞在2日目が路上ライブの日と決まった。
定期的にライブの許可取りをしていた曜日に当たったのはラッキーだった。
シオンちゃんにも開催のお知らせをする。
彼女の返信は早く、この数秒間に何でそんなに文章打てるの? と思うくらいメッセージが届いた。
弦は滞在中、昼過ぎなら空いているとの話だった。
どんな予定があるのか…まだ聞けていない。僕も朝からバイトがあるし、結局会えないのだからいいか、とも思う。
――滞在一日目。
夕方からライブの打ち合わせを兼ねて会うことになった。一応シオンちゃんにも声をかけると、すぐに「行くッス!」と返信が来た。
いつもの駅、夕飯がてらファストフード店に入った。
シオンちゃんが少しだけ遅れるとのことで、僕と弦は先に席で待つことにした。
「シオンちゃん、先に注文してて…だって」
座る席を確保して、届いたメッセージを隣の弦に伝えた。弦とシオンちゃんは今日初めて、顔を合わせるわけだけど、何となく似た雰囲気もある二人なら、すぐに仲良くなれる気がした。
シオンちゃんがまた熱く語る様子を想像して軽く笑ってしまった。
「よーし、じゃあ何食べるかな~」
座席に置いたリュックから財布を取り出し、注文カウンターへ弦が向かった。
僕も立ち上がり行こうとした時、彼のリュックからポロリと鍵が落ちた。
「あ、お前ちゃんとチャック…」
すでに離れた弦の背中を見ながら鍵を拾い、リュックの中に戻そうとした時だった。
『篠笛総合病院 病院のご案内』
封筒サイズくらいのパンフレットが2つに折り畳まれ、ポケットに入っているのが見えた。
思わず、鍵を持った手がビクッと震えた。
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