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明日の日中はそれぞれ予定があるため、その後は解散となった。
シオンちゃんは僕の代わりに路上ライブの宣伝をしてくれることになり、申し訳無さと有り難さでいっぱいだった。
「他にもオリジナル曲の音源貰えれば、動画作るんで!」
制作意欲が掻き立てられた彼女は、とても生き生きしていた。僕は音源を後で送ると約束して、弦と共にシオンちゃんを見送った。
「あれ? 響一も電車だろ?」
ホテルへと向かおうとする弦が、残った僕に声をかけた。僕は弦にさっき見た病院のパンフレットについて聞き出そうか迷っていた。
「弦…あのさ、無理してない? その…体キツいとか何かない?」
上手く核心をつけずに曖昧な聞き方をしてしまった。
弦は不思議そうに僕を見ている。
「どした? 急に。何かさっきから変だぞ? キツいとか無理してるとかないけど…」
「いや、心配になってさ。遠くから来て、僕のライブに巻き込む形になっちゃったし…弦には弦の用事があるのに…」
申し訳ない気持ちでちらりと弦の顔を見ると、キョトンとした表情から笑顔になった。
「何だよ、気にすんなよ。むしろ気晴らしになって、めちゃ楽しいし」
「気晴らし…」
ポツリと呟いたその言葉は、弦には聞こえていなかった。気晴らし…弦には、何か憂鬱なことがあるのだろうか。
「弦、何か困ったことがあれば遠慮なく言ってよ?」
そう言うと、笑顔から少し切なげな表情にふと変わった。そんな気がした。
「…おぅ、サンキュー」
それ以上は聞けずに終わってしまったけど、弦自身は元気なのだと、ひとまず安心した。
他に何があろうとも応援したい。その時はそう思ったんだ――。
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