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Walking on the Milky Way
「レンは、いつ分かったの? その、女の子じゃないなって」
夏休みのグループ課題を一緒にしている時だった。遥香が突然、気になってしょうがない、と話し始めた。
「え? なに急に聞いてんの?」
律が驚いたように遥香を見る。
「別にいいけど。そんなの興味ある?」
俺が見ると、みんなが興味津々って感じでこっちを見ていて。特に、頬杖をついて、眼鏡の奥から真剣な眼差しでこちらを見ている凪の事が気になってしまう。
いつか、この俺の考えについて、凪と話を出来る日が来るんだろうか。
もしも凪が俺になにか話してくれれば、俺はいつだって話を聞けるのに。
だけど、俺からそこへ踏み出すことは、タブーな気がするんだ。
「んー、中学の頃かな……」
「決定的な出来事があったの?」
「うん…まあ。え、ほんとに聞きたいの?」
俺が話し始めると、みんながこっちに集中して耳を傾けてくれる。
こっちに来て、まさか自分がこんな風に自分の身の上や過去を話したりするなんて、思ってもみなかった。そもそも、自分の事を打ち明けたりするつもりも無かったのに。
自分がどこで心を許したのかは覚えていない。出会って、そう時間は掛からなかった。
きっかけは、遥香からの直接的なアプローチとデートしようよ、の誘いだった。律も凪も愛美もいる時に、遥香はいつも俺に軽口でそう言っていた。かっこいいから、なんて本気とも冗談とも取れるトーンで何度も誘われた。
その時に軽い気持ちで、すんなりと口から流れ出て行った。
「俺、女の子に興味ないんだ」
みんなが目を丸くしたのと同時に、俺自身も驚いてしまったけれど。
あの時の俺の勘は冴え渡っていた。
4人とも、茶化すでもなく、受け止めてくれたし。口止めした訳じゃないけれど、他のクラスメイトは今も誰も知らないようだ。
こんなにも心を見せられる友達に恵まれるだなんて想像もしていなかったし、これは嬉しい誤算だった。
今は、なんだか話したい気分かも……。
そう思ったら、あの頃の事が昨日のことのように思い返される。
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