Walking on the Milky Way

3/8
前へ
/26ページ
次へ
 ハートとスペードの1から6のトランプを混ぜて、1枚ずつ先に配られた。その後、黒と赤のサイコロをふって、出た数字のカードを持っている2人がキスをするというゲームらしい。  ファーストキスもした事が無いなんて、言えなかった。  手元には、スペードの5のカード。  俺がなぜ呼ばれたのか分かった。人数合わせだ。12人必要だったんだろう。この会はよく行われているらしく、メンバーは何人かを除いて固定じゃないらしい。  キスっていうのはいつか誰かを好きになって、恋人になって段階を踏んでからするものだと思っていた。  少なくとも、今ここにいる俺以外の11人にとっては、そうじゃないらしい。  それに、キスなんて今したいかどうかもよく分からない。  本当に変な事に巻き込まれてしまった。  何か適当に理由をつけて帰るって、言おうかってずっと考えている。だけど、この雰囲気を破ってそう言う勇気がなくて、じっと縮こまっているしかない。  目の前で話した事もない同級生がキスを交わしている。それだって、気まずくて直視出来ない。  頭が真っ白で心臓は嫌な感じに鳴りっぱなしで苦しくて。早く家に帰りたい。  ダンに助けを求めようと顔を見ると、ダンは満面の笑みで転がるサイコロを見つめていた。そうだ、ダンはこれがしたかったんだよな、と思い出した。ダンに助けてもらうのは諦めるしかない。  黒いサイコロが投げられるたびに5は出るなって心の底から願っていたのに、俺の番はあっけなく回って来た。  相手はよく数学のクラスが一緒になる女の子だった。他の男子が羨ましいとかいいなとか、言っている。だけど、目を閉じて勢い任せに唇を当てただけだった。  なにそれーって周りのみんなが笑うのが聞こえたけれど、俺は下を向いてなんでもないふりを必死で装った。相手の女の子の顔も見られなかった。  だけど実際、ただ緊張した以外に、なんにも感じなかった。思い描いていたドキドキや、心の変化は起きなかった。あっけなく、終わってしまったファーストキスに、なんだかガッカリした。
/26ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加