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そこには昨日の自分が写っていた。とびきりの一軍コスメで完璧に彼の好みに合わせて、あっさりと振られてしまった惨めな私が。
もう嫌だ見たくない、そう小さく呟きながら、ティッシュで口元をゴシゴシと拭き取った。
しばらくの間、静かな車内で真っ赤な唇の跡がついたそれを見つめていた。右手の人差し指でその模様をなぞって遊んだ。そうしていると、突然車外でバンッと大きな音が聞こえた。驚いて顔を上げると何の事はない、隣の車のドアが閉まった音だった。
ため息混じりに、そのティッシュをクシャクシャに丸め、それからゴミ箱に投げ捨てた。
バイバイ、昨日の私。
心の中でそう呟いた。
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