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どうする?
それから僕はとある決断をした。
「愛衣が100回僕のことを忘れたら100回自己紹介をする。」
障害は根本的に治すことは出来ないけど、改善なら出来る。つまりは、「その方法を試せば覚えてもらえるかもしれない」ということだ。
早速僕は愛衣に自己紹介をした。
「僕の名前は…」
だが、やっぱり覚えてくれない。そりゃそうだ。今の彼女にとってはすぐに覚えられるものではない。何回言っても愛衣はとぼけた顔で「どちら様ですか…?」と言う。
しかし、そんなことで根負けしてはいけない。結果が同じだとしても、何回も挑戦してやる。
もう500回くらい挑戦したある日、僕はとある疑問が頭に浮かんだ。「このやり方は本当に愛衣が望んでいることなのだろうか?」
考えてみれば、愛衣が僕の自己紹介を聞いてる時はいつだって曇った顔だ。
愛衣は記憶障害になっても「そんなの気にしない。」と言わんばかりの笑顔だ。
もう少し考えてみれば、僕はずっと自己紹介しかしてなかった。「愛衣に覚えてほしいから。」その理由を使って、僕は身勝手な事をしていた。
愛衣が望んでいることはなんなんだ?
あるはずだ。愛衣と僕どちらとも徳をする方法が。
そのためには僕の利益にしかならない自己紹介をやめなければいけない。
どうすればいい?
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