謎の多いランマル先生

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謎の多いランマル先生

 不味すぎて舌が麻痺するのでは、と思う。  いっそ麻痺してほしい。  味については形容し難い感情が渦巻いて、言葉にならない。 「ーーーー•••••」  この不味さは誰にも言い表す事は不可能だろうと思う。  いくら出来の良いティアレーゼでも無理です。  なのに、どうしてランマル先生はそんなに嬉しそうなのか。 「いやぁ昔から良薬は口に苦しと言うからね」  苦いレベル超えてますよ先生。  相変わらずの和テイストな衣装に容姿。  この辺はきっとゲーム制作陣のこだわりもあったと思う。  そう言えば、先生は穂乃果一番の推しだった。攻略対象者じゃないけど、このランマル先生が出てくる場面は全て見たと言ってたし。  ゲームのランマル先生は、東の大陸のその先の島国出身と言っていた。  随分遠い所からと思ったけど、そうだった転移魔法を使える人がいる世界だったと思い直す。  無制限に使える訳じゃ無いけど。  西の医療術を学びにやってきたランマル先生は、一人の女性と恋に落ち、それがグランツ公爵家の使用人だった事から、ランマル先生も公爵家に仕える事になったんだよね。  だから本邸から離れた別邸で生活している。そこが病院も兼ているのだ。  騎士団も怪我がおおいし、魔物討伐などで入院が必要な人も出てくるからね。  この先生に関しては、攻略対象者じゃないからか、ゲームと設定は変わっていない?  脇役キャラなので、よく知らない分からない事が多い。  うーん、今の所、狂ってるのはランマル先生の味覚だけだと思う。  お子様共々、円満なご家庭で何よりです。  あ、そうそうびっくり事実は判明した。  ーーーーそう、妻がティアレーゼの乳母、ハンナなのだ。  息子がティアレーゼよりも半年早く産まれていて、体格がよその子と比べても大変良い。  身体強化能力に既に目覚めていて、グランツ公爵の名で、王都の騎士養成学校に入学させる為、グランツ公爵家の騎士団長に預けられている。  不味い薬っぽいナニカを遂に片付け、勝利を確信したティアレーゼはハンナに淹れて貰ったお茶で口直しをする。  闇堕ちしてるのはこの薬じゃないかと思う。  ーーーー割と本気で。 「そう言えばお嬢様。何故あんな夜中に温室へ?」  ああそうだった。夢だと思ったけど夢じゃなかったんだ。あの夜の出来事は。  そう、流れ星が落ちてきて来たと思ったのよね、ティアレーゼは。  あの光は攻略対象者ーーーー人では無い。  精霊の王子、レオンだ。  夜中に目が覚めてしまったティアレーゼは、いつもならほんのり灯る就寝灯が、沈黙している事にビビって、シーツに潜ろうとしたんだけど、その時にカーテンの隙間から強烈な光が射し込んだ事に驚いたのだ。  星が降ってきた!ってお子様が思ってしまうのは無理も無い。  暗闇の恐ろしさもぶっとんで、そっと外を覗くとキラキラした塊が温室の方に見えて、好奇心の赴くまま、バルコニーから飛んで見に行ってしまったのだ。  でも何と説明すれば良いやら。  ティアレーゼは温室でレオンと合った後に倒れてしまい、早朝の手入れをしにきたロンバートに見つけてもらってーーーー風邪熱を出して寝込んだのが真相。 「温室に流れ星が落ちたと思ったの」  うん、実に子供らしい言い訳だ。嘘じゃないし。 「黙ってお屋敷から抜け出すのはお止めください。お願いですからーーーーティアレーゼ様」  ギュッと、ティアレーゼの小さな手を握るハンナの手が震えていて、自分の立場を考えた。  そうだった。ティアレーゼは公爵家の令嬢だ。何かあればハンナの首が飛ぶ。物理で。 「ごめんなさい。ハンナにはお叱りがいかないようにーーーー」 「違います、そうでは無くて!」  最後まで言い終わらないうちに、ハンナの珍しくも大きな声が、かぶった。 「心臓が縮上がる思いを致しました。いつぞや、エリスの花を持ち帰った時も、まだ日が登らぬ朝に、ロンバートに抱えられて気を失ったティア様を見た時も•••••」  そこまで言われて気が付いた。  ハンナは実の子と同等以上に、ティアレーゼを大切に思ってくれている。 ティアレーゼも、母親の様に慕っていた。 「あーーーー。うん、心配掛けてごめんなさい、ハンナ。もうしないから、泣かないで?」 この言葉をこの後に早速破ってしまうとは、ティアレーゼは想像もしてなかった。
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