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「いい加減にしろよ。こんなことせずに、私の前に堂々と現れろ!」  真倉は少女を振り払おうとするが、箒が投げ飛ばされる。箒を拾おうとしたのか、彼女が床に手を伸ばしたとき、メッセージアプリの着信音がした。こんな状況だと言うのに、彼女はスマホを出して画面を確認している。  なにをしているんだ。僕が立ち上がったと同時に、スマホをポケットに突っ込んだ彼女が、少女の肩を掴んだ。 「土森、しっかりしろ! お前はこれでいいのか!」  真倉は声を張り上げ、実体のない少女を怒鳴りつける。その声にこたえるように、甲高い少女の声が教室に響いた。 「勝手なこと、しないで!」  そう言ったのは、真倉が肩を掴んでいる白い少女ではない。僕は声のした方へ目を向けた。  床に座り込んだ埜呂先生が、ぽっかりと口を開いて天井に顔を向けていた。開いた口から、するすると霧のような白く発光したものがあふれ出す。白く発光したそれは、広がっていたかと思うと一か所に集まり、人型に変わった。  その姿は、真倉の前にいる土森という少女とそっくりだ。 現れた少女が床に転がる箒を拾い、同じ顔をした少女に向かって振り上げる。真倉の前にいる彼女の分身が、気づいて振り向いた。 「あんたなんて、大嫌い! 消えてよ!」  振り上げた箒が、白く発光した瓜二つの少女の額に打ち付けられる。鈍い音がしたかと思うと、二人の少女の体が白く明滅した。  痛みを感じるほどの光りに、僕は目を閉じる。気が付くと、二人の少女は忽然と消えていた。
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