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 意識が飛ぶ前のことを思い返す。  あのとき僕は、いつものように放課後の教室で、窓からグラウンドを眺めていた。  うちの中学校は、部活に力を入れている。運動部から文化部まで、部活に入っている生徒がほとんどだ。  好きなことに打ち込む姿は、はたから見てもそれだけで輝いて見えた。正直、素直にうらやましい。 (二年生からでも、やっぱり部活に入ろうかな)  そろそろ帰ろう。いつものように、少しの虚しさを感じ、僕は通学かばんを背負った。 (一通り部活には入ってみたけど、どうやったら僕でも続けられるんだろう)  ぼんやりと考えながら廊下に出ると、背後から声をかけられた。 「ねえ、真倉 名呼って知ってる?」  振り向いた先にいたのは、ショートヘアの女の子だった。うちの学校の制服ではなく、紺色のセーラー服だ。彼女は床をすべるように距離を詰め、僕の顔を覗き込む。  鼻先が当たりそうな距離に、僕はのけぞった。それを拒むように、少女が僕の手首を掴んだ。 「真倉?」  クラスメイトの名前を聞かれ、僕は彼女の名前を復唱した。 「そう、真倉」  彼女は知ってるんだと言うと、手首から手を離し、するりと僕の頬に手を滑らせた。 少女の顔がさらに近づき、少し動けば鼻がぶつかりそうだった。じっとりとした丸くて大きな瞳から、視線を逸らせない。 (もしかして、キスされる?)  妙な脂汗が、額に滲む。息苦しくなり、僕は口をぽかんと開いた。少女の顔が視界に広がったかと思うと、僕はまぶしさに目を細めた。  白く発光していたのは、少女だった。彼女の体は透き通り、まるで霧のように変わっていた。霧状になった彼女の体が、するすると口に入ってくる。 (気持ち悪い!)  驚いた僕は、思わず息を吸い込んだ。その拍子に、彼女の体はあっという間に僕の中に入っていった。
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