2人が本棚に入れています
本棚に追加
/12ページ
2
意識が飛ぶ前のことを思い返す。
あのとき僕は、いつものように放課後の教室で、窓からグラウンドを眺めていた。
うちの中学校は、部活に力を入れている。運動部から文化部まで、部活に入っている生徒がほとんどだ。
好きなことに打ち込む姿は、はたから見てもそれだけで輝いて見えた。正直、素直にうらやましい。
(二年生からでも、やっぱり部活に入ろうかな)
そろそろ帰ろう。いつものように、少しの虚しさを感じ、僕は通学かばんを背負った。
(一通り部活には入ってみたけど、どうやったら僕でも続けられるんだろう)
ぼんやりと考えながら廊下に出ると、背後から声をかけられた。
「ねえ、真倉 名呼って知ってる?」
振り向いた先にいたのは、ショートヘアの女の子だった。うちの学校の制服ではなく、紺色のセーラー服だ。彼女は床をすべるように距離を詰め、僕の顔を覗き込む。
鼻先が当たりそうな距離に、僕はのけぞった。それを拒むように、少女が僕の手首を掴んだ。
「真倉?」
クラスメイトの名前を聞かれ、僕は彼女の名前を復唱した。
「そう、真倉」
彼女は知ってるんだと言うと、手首から手を離し、するりと僕の頬に手を滑らせた。
少女の顔がさらに近づき、少し動けば鼻がぶつかりそうだった。じっとりとした丸くて大きな瞳から、視線を逸らせない。
(もしかして、キスされる?)
妙な脂汗が、額に滲む。息苦しくなり、僕は口をぽかんと開いた。少女の顔が視界に広がったかと思うと、僕はまぶしさに目を細めた。
白く発光していたのは、少女だった。彼女の体は透き通り、まるで霧のように変わっていた。霧状になった彼女の体が、するすると口に入ってくる。
(気持ち悪い!)
驚いた僕は、思わず息を吸い込んだ。その拍子に、彼女の体はあっという間に僕の中に入っていった。
最初のコメントを投稿しよう!