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空き教室ですべて話し終わり、僕は深く息を吐く。いったい、どうしてこんなことになったのか。同級生の首にかけた手を見下ろし、軽く握りしめた。
「それで、私の首を絞めたっていうのか?」
机に腰かけて足を組んだ真倉が、腕を組んで僕を見下ろす。ツンと尖った鼻先を上げた彼女に鋭い眼光を向けられ、壁際に腰をおろした僕はいたたまれなくなり、口ごもる。僕よりも頭一つ分背の高い彼女は、どこか貫禄があって同級生に思えない。
「……はっきりとは分からないけど、おそらくは」
僕は「ごめん」と謝り、教室の隅に顔をそらした。
「先生は大丈夫ですか?」
教室の隅にいる埜呂先生に話しかけると、半分閉じた眠そうな顔が僕を見た。その体には、ビニールひもが巻き付けられている。
「ぼんやりするけど、大丈夫だよ。私は慣れているから、こういうことには」
あくびをかみ殺すように言った先生は、僕の顔をじっとのぞき込む。
「戒田君、君は近づいたらいけないものに会ってしまったようだね。その子は、どんな子だったか、思い出せるかい?」
埜呂先生に聞かれ、頭に思い浮かんだのはあの少女のことだった。
「見たことない制服を着た女の子でした。セーラー服で、目が真ん丸で大きくて」
彼女の顔を頭に浮かべようとするが、ぼんやりとした印象しか思い出せない。思い出そうとすると、彼女の顔にノイズがかかったようになるのだ。
(あんなに近くで顔を見たはずなのに)
唯一、印象に残っているのが、目じりが少し下がった大きな目だ。
「おそらく、戒田君の体に入ったのは、真倉さんに強い感情を向けている誰かだろう」
「誰かって、生きてるってことかよ。幽霊かと思った」
あの、白く発光したなにかを思い出しているのだろう。真倉は頭を掻きながら、視線を上に向けていた。
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