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「生霊というやつだよ。私の体の中にいるその子から、君に対する強い怨念にも似たものを感じる」  そう言った先生を見下ろし、真倉は顎に手を当てて考え込む。 「怨念って、恨まれるようなことをしたことは、ないはずだけどな。たぶん」 「心当たりはないってことか、真倉」  僕が尋ねると、真倉は腕を組んで唸るように考え込んだ。はっと顔を上げた彼女は、何か思い出したように、僕を指さす。 「ところで、今更だけど、あんた誰だっけ?」  心当たりがあったわけではなさそうだ。 「ひどいな、クラスメイトの顔くらい、覚えておこうよ」  進級して新しいクラスになったばかりだといっても、同じクラスの生徒に顔も知られていないのは、さすがに傷つく。 「僕は戒田(かいだ) (がく)。君のクラスメイトだよ。同じ陸上部にも入っていたのに、忘れるなんて、薄情だな」 「陸上部に? いや、覚えてないけど」 「まあ、一年生のころに、三日間だけだったけどさ」  自嘲気味に笑うと、真倉は「ああ……」と、納得したようにうなずく。 「思い出した。部活荒らしだろ、お前。部活に入っては、三日間でやめる奴がいるって、噂で聞いたことがある」  知らないうちに、かっこ悪いあだ名で噂をされていたらしい。頭に「妖怪」とでもつければ、怪談話にでもなりそうだ。 (三日間だけ部活に入る妖怪ってなんだ)  まったく怖くはない。ただの三日坊主に、妖怪の称号は勿体なさそうだ。 「僕の話はいいんだけど、真倉はセーラー服で大きな丸い目の知り合いはいない?」 「丸い目って、んな抽象的な……」  真倉は再び考え込んだかと思うと、スマホを取り出して操作し始めた。
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