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「もしかしてそいつ、こんな顔してなかったか?」
真倉は机から降りると、僕にスマホを渡した。スマホの画面には、少し幼い顔立ちの真倉が写っている。髪は今よりも短く、顎のあたりでカットしたボブヘアだ。その隣には、赤茶けた髪をポニーテールにした少女が並んでいる。真倉と少女の胸元に見えるのは、金と銀のメダルだ。真倉が金、もう一人の少女が銀のメダルを首からかけていた。
なにかの大会なのか、二人ともジャージ姿だ。記念写真のように並んでいるが、その表情は硬い。二人の周りには、数人の子供たちが写っている。みんな中学生ではなく、小学生くらいの子たちばかりだ。
「うーん、この子みたいな顔だった気もするけど……」
たしかに、真ん丸なドングリ眼だ。あの時に見た少女に似ているような気はするが、いかんせん記憶がはっきりしない。僕はスマホを真倉に返し、首をひねる。
曖昧な僕に苛立ったのか、真倉はわずかに眉根をひそめた。
「真倉さん、スマホで私を撮りなさい」
埜呂先生の声に、不機嫌そうな表情のまま真倉が僕から視線を逸らす。
「先生を?」
訝しげな表情の彼女に、埜呂先生はいつもの眠そうな表情で「そう、私を」と返した。
「……撮りますよ。はい、チーズ」
真倉は意外と素直に、スマホを構えて先生を撮った。かけ声に合わせ、埜呂先生は律儀に口を「チーズ」と動かす。
「やっぱり、土森だ」
撮った画像を確認した真倉は、わずかに目を見開くと、僕にスマホを渡した。
スマホの画面を覗くと、埜呂先生の背後に白く透けた人影が映っていた。
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