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「僕が会ったの、この子だよ」  彼女に間違いない。僕と真倉は、二人して埜呂先生に視線を向ける。埜呂先生はなにが写っているのか分かっていたのか、驚いた様子はない。 「人の目は、見たいものしか見えないが、写真はあるものをそのまま写すんだよ。私の中に入っている子は、どうやら君にあまりよくない感情を向けているらしい」  たしかに僕も、生霊が体に入ったとき、真倉の存在が許せないという、激しい思いを感じた。その感情は濁っていて輪郭が掴めなかったが、恨みや殺意ではなかった気がする。 「そこまで分かるなら、なんとか話を付けられないんですか? 仲介役として、和解させるというか」  僕は彼女が体に入ったとき、彼女の感情に捕らわれて、逆らうことはできなかった。埜呂先生を見る限り、彼女の感情に乗っ取られている様子はない。どうにか、体の中の彼女と話し合いでもできないものだろうか。 「死霊と違って、生霊はある意味たちが悪い。強い感情の塊のようなものだから、私が話をしたくても、意思疎通が難しいんだよ」  いろいろと、生霊事情も簡単ではないようだ。 「じゃあ、お祓いとかできないんですかね?先生、こういう状況には慣れているって言ってたし、なにかできないんですか?」 「死霊と違って、もとは生きている人間だ。できれば、本人同士で和解してもらった方が、早いと思うが……」  埜呂先生は真倉に視線を向けた。彼女はスマホをじっと見つめ、黙り込んでいる。土森という少女のことは知らないが、恨まれている相手に連絡を取るのは簡単なことではない。
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