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「大丈夫か、真倉」  連絡し終えたのか、スマホをポケットに納めた真倉に僕は尋ねた。 「大丈夫もなにも、ないだろ。私に言いたいことがあるなら、先生が言ったように、直接話せばいいだけだ。それよりも戒田、埜呂先生の紐をほどけ」  真倉は僕に言うと、教室の後ろに設置されたロッカーを開けた。掃除道具が納められたロッカーから、彼女は一本の箒を取り出す。 「先生の中に入っているのは、あいつの感情だけなんだろ? だったら、連絡が来る前にちゃっちゃと、片付けた方がよくないか?」  埜呂先生に向けて、彼女は箒を構えた。どうやら、生霊と直接対決を望んでいるらしい。埜呂先生ににじり寄る彼女の目は本気だ。 「先生、僕どうしたらいいですか?」  彼女は埜呂先生を殴りつけてでも、生霊を倒すつもりだ。箒で殴りつけたところで、あの霧の少女を倒せるとは思えない。どうしていいか分からず、教室の隅にいる先生に僕は耳打ちした。 「戒田君、私の目を……」  ひざを折った僕が顔を近づけると、埜呂先生はうつむいてぼそりと呟いた。僕は何と言ったのか上手く聞き取れず、先生の顔を覗き込んだ。 「だから私の目を見たらっーー」  言いきらないうちに、埜呂先生の口からと白い霧のような発光物体が飛び出した。するすると僕の目の前で、それは蛇のようにうねっている。  そうだ、これってエクトプラズムだ。僕は、ふと頭の片隅で、一人納得する。  白い発光体――エクトプラズムが渦巻きならが、僕の口に飛び込んだ。そのとたん、意識がぼんやりして、体が自分のものではないような感覚に襲われる。 (僕、真倉を消さないと)  誰かに命令されているように、意識が支配されていく。体が勝手に、真倉の方に向く。  だめだ、行ったらいけない。そう思うが、自分の体を制御できない。
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