妖精のいたずらと婚約破棄

1/1
前へ
/57ページ
次へ

妖精のいたずらと婚約破棄

「妖精のいたずらにかこつけて、エクレア嬢の宝石を盗むなんて何事だ!!」 そう言って自信満々に私の婚約者が、私にそのアクセサリーを突きつけました。 そして、私の婚約者の隣にいた美しい金髪ブロンドの豪華な縦巻きロールの令嬢は…… 「ひどいわ、シュガレット子爵令嬢……私……ただあなたと仲良くしたかっただけなのに……」 なんて言って肩を振るわでシクシクと泣いていました。 あなたそんな性格じゃないでしょうに……と、当時転生したということを思い出していれば言えたのですが…… 転生した記憶がなかった私は、年相応の性格でして、身の潔白を証言するのに必死でした。 「そんな!私は盗んでなどおりません!」 「ならば、なぜ君の部屋からこれが出てくるんだ!」 「身に覚えがございません、なぜ私がこのようなことをしなければならないのですか!?」 「エクレア嬢が羨ましかったのではないか?君の家は家計が逼迫していてこのような豪華なものは買えないからな」 「そんな貧しい心は持ち合わせておりません。」 まぁ、証拠がないのに『心当たりがありません』だなんて、政治家の『記憶にございません』レベルで信用がありません。 なので当然…… 「素直に認めれば、まだ潔いものの……他人のものを盗むような人間と婚約関係など結べない。君との婚約は破棄させてもらう!!」 こうなるわけです。 当時は泣き喚きましたね……まぁ、弁論ができない自分に落ち度がありますが。 なんてことがあったのが3年前。 盗みの濡れ衣を着せられた私は、父の爵位返上を回避するために、貴族社会から追放されることになりました。 さぞかし悲惨な生活をしていることだろう……と想像されるかもしれません……。 いえ、昨今の流行を考えると、転生者がそんな悲惨な庶民生活を送っていないことの方がベターでしょうか? だとしたら、その想像を私は裏切りません。 現在私は……と言いますと…… 「いらっしゃいませ」 名前を変えて、小さなお菓子屋さんを切り盛りしているオーナーです。 ちなみに従業員はオーナーの私、ノエル・シュガレット改めノノ・シュガーと…… 「「「「「「いらっしゃいませ!!」」」」」」 手のひらサイズの妖精が無数です。
/57ページ

最初のコメントを投稿しよう!

215人が本棚に入れています
本棚に追加