妖精さんとアンナ

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妖精さんとアンナ

「それではアンナ、お菓子作りの経験を伺っても?」 これは大事な質問です。 いわゆる部署……配置?を決める質問です。 人間得意不得意があるもの、適材適所の業務を与えるのが、オーナーの仕事ということです。 パティシエ希望とのことなので、お菓子作りの経験があれば、厨房の戦力になるのですが…… 「これから経験を積もうと思っています!」 つまりズブの素人ですね。 わかります。 まぁ、そうですよね。 彼女は皇族のコネでここにきたのです。 皇族の知り合いなのであれば庶民のわけありません。 皇宮の使用人にしたって、セキュリティーのために爵位のある家しか使用人にはなれません。 メイドでも厨房係でなければ、料理はまずしたことがないでしょうしね。 いや、落胆はしてませんよ。 懐かしいなって思って、私も最初はこんなんだったなぁって。 「それならば、読み書きはできますか?」 「一通り、教育は受けてます」 それなら、彼女には店に出てもらいましょう。 彼女がお会計をしてくれれば、私は厨房でお菓子製造に力を入れられます。 お菓子作りの仕込みは、終業後からでも問題はないでしょう。 朝はいつも通り店に出す分のお菓子を作って、開店したらチョコ餅の製造をしながら、フェアリーイーツ分のお菓子の仕込み。 閉店後、型抜きなどの簡単なお手伝いを彼女にお願いしてフェアリーイーツに これでお店が回るはずです。 いや……お菓子だけ作っていればいい日が来るとは、至福の時です。 人手って大事。 「とりあえず10箱分作りましたので、お会計をこなしながら、この試食を渡して売り込んでみてください。」 ひとまず出来上がった分のお菓子の品出しを終えると、配置についたアンナに新票品のチョコ餅の試食を彼女に渡しました。 すると、それを受け取った様子をみた妖精たちは、私にこんな質問をしてきました。 「オーナー、おもちいくつ売るですか?」 「お餅ですか?そうですね……今日は様子見して、10箱程度に……」 「「「「「「「えー……」」」」」」」 あからさまにがっかりする妖精たち。 何か交渉するべく、ワラワラと集まってきました。 「だ……ダメでしょうか……?」 「ダメじゃないけど、つまんない」 「もっとうろう」 「みんな買ってくれるよ!」 「すっごく美味しい」 「100いこ100こ!」 妖精たちの後押し。 お墨付きなのは嬉しいんですけどね…… でも、初めての商品、馴染みのないお菓子。 売れる自信はありません。 まぁ……トリュフやケーキに見えないこともないですけど…… 「個人経営店で、妖精のお墨付きがあっても、そんなに売る自信は……」 「オーナー、売ってみましょうよ!」 やんわりとお断りを入れようとした時お断りを入れようとした時、アンナが勢いよく意見を申し出ました。 「私もこれ、美味しいと思います!」 「あ……アンナさん……そうは言いますけど……売れなかったら……」 「オーナー、これをこのお店の名物にするつもりなんですよね?」 そんなつもりはないのですが…… 殿下が勝手に盛り上がってるだけなのですがそれは……。 「こんな弱気でどうするんですか!?物事にはリスクがつきものです!!絶対強気で大量に売るべきです!!」 「そ……そこまで言うなら……」 熱意に押されてしまいました。 まぁ、今日売ってみて売れなければ、明日調整すればいいですし。 余っても妖精たちが平らげてくれるでしょう。 赤字にはなりますが、今日1日で納得してくれるなら、安いものです。 「では100箱……というのは自信がないので、50箱ほど出しましょう。1時間に10箱ずつ出して様子見。それでいかがです?」 皆さんにそう尋ねたところ親指を上に立ててグッジョブという言葉をいただいたので、それで今日1日はやってみることとなりました。 果たして……結果はいかほどに。
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