妖精さんと厄介客

1/1
196人が本棚に入れています
本棚に追加
/43ページ

妖精さんと厄介客

「と、言うことで、連日チョコ餅は完売しております」 「俺のおかげだな」 チョコもちが売れるようになって一週間くらいが経ったこの日、またしても殿下が営業中に裏口からやってきましいた。 売れ行き状況を聞きに。 そして厨房でお菓子を貪っています。 もはや裏口の常連です。 「殿下は毎日いらっしゃいますね。暇なんですか?」 「あいつに任せてる」 哀れ、お付きの人。 「サボりだサボりだー」 「リボサーだー」 自由な存在の妖精達にまでこんなことを言われてしまえば、世話ないですね。 王宮で作ったチョコ餅のおかげでいつくようになりましたが、本来元令嬢の庶民の私が、こんなに気安く会える相手ではありません。 そしてもっと敬い崇める対象のありがたい存在のはずです。 なのに、ほぼ毎日いらっしゃるおかげで、私は慣れてしまっていい加減ありがたくもなんとも思わなくなってしまったどころか、少し適当にあしらうようになってしまいました。 こんなんじゃいけないんですけどね。 慣れって怖い。 「まぁ、でもこの調子でしたら、殿下の仰っていたチョコ餅の名物化も夢じゃないかもしれませんね。」 「あの、オーナー」 「あら、アンナ、どうしました?何かトラブルでも?」 「そ……それが……オーナーに会いたいと言う貴族のお客様が……」 「貴族……」 「殿下のお迎えではないですか?」 「あの仕事量なら、探しに来る時間もないと思ったんだがな。」 仕事してくださいよ。 この人、将来一国を担うんですよね? 美味しそうにお菓子を食べていただいていることには感謝しておりますし、授業印提供いただいたことも感謝しているのですが 未来に不安しかありません。 「では殿下、私は少し話して時間を作るので、その間におかえりの準備をしてください。」 私は妖精達にお土産の準備をお願いすると、アンナの方に歩いて行き、来客の対応をしようとしたのですが、アンナが口をモゴモゴとさせていました。 「どうかしましたか?」 「あの……それが殿下のお知り合いではないようで……」 「あら、お迎えではないのですか?」 「どちらかというとオーナーの……」 「私……ですか?」 はて、うちのお店に来るような知り合いの貴族なんかいたでしょうか? 確かに初期費用は実家に支援いただきましたが、初期の初期だけでしたし。 追放された理由のこともあるので、それ以来お会いしてないのですが……まさか事業失敗してお金を借りにとか……? 庶民の娘ひっ捕まえてそんな情けないことはしないと思いますが…… 「わかりました、出向きましょう。」 私は厨房を後にして、店頭へと足を踏み入れました。 一目見て、相手が誰かわかりました。 元婚約者様です。
/43ページ

最初のコメントを投稿しよう!