210人が本棚に入れています
本棚に追加
/55ページ
妖精さんと宣伝効果
「お客さんぎょうさんおりまんなー」
「流石に行列はないですが」
「フェアリーイーツも予約殺到〜」
妖精たちのいうことは本当です。
店内にはお客様が常にいる状態に戻りました。
カッコンどりは卒業です。
よほど必死に噂を外部に漏らさない何か対策を立てたのか、街の外には一切広がらず、かつ殿下の好物菓子というのがかなり国民の心を掴んだようです。
まさかの作戦勝ち、現実は小説よりも奇なりとはよく言ったものです。
とはいえ、街の人とか常連さんとかは、いらっしゃらないままで、街の外から遠出してわざわざ来てくれる人ばかりですし、行列とまではいきませんが……。
それでも本当は、遠くからきたお客様に対して噂を吹き込むのでは……と不安だったのですが、そのような事態は起きませんでした。
街の人たちが、そもそも噂を怖がって店に近寄らないのが原因かもしれません。
チョコ餅だけを目当てに来てる人は、街を特に散策してるわけではないみたいなので。
それともう一つ理由が。
「こっちは衰えず好調ですね。」
「ありがたや〜」
このフェアリーイーツ。
カッコンどりが鳴いている最中もずっとフェアリーイーツだけは好調だったのですが、皇子好物説が流れてからさらに注文数が増えました。
「配達先はどのような方が多いですか?」
「街の人多め、いつもここに来てた常連さんも多いです」
なるほど、お菓子事態は変わらず興味持っていただけてい流ということですか。
とはいえお店に来ると私になんかされるか不安なので、妖精たちならその心配がないと思って、注文している感じですかね。
いえ……しかしそれでは辻褄が合いませんね……。
私が妖精使って物を盗む可能性もあるでしょうし、そもそも妖精たちのイタズラでものがなくなるという言い伝えがあるわけですし……
そういえば、なぜそんな伝説があるのでしょう。
少なくとも、このお店からものがなくなることはないですし、自由に生きてるからといって勝手に物を持っていくような子達では……
「オーナー、出発の時間です。荷物ください」
「あ、ごめんなさい。」
いけないいけない、物思いに更けていたら、仕事のことを忘れていました。
今日は注文数が多いんですから、ちゃっちゃと商品渡さないと。
「じゃあこれ、フェアリーイーツ用です、配達をお願いします」
「まかされよう、いってきまうすー」
本日フェアリーイーツ担当のうちの一人の妖精は、配達に向かおうとお決まりの三輪車のペダルに足をかけました。
そして漕ぎ出そうとしたところを私は呼び止めます。
「あー待ってください」
「なんじゃらほい。」
「何度もお伝えしましたように、貴族の方の皆様には、くれぐれも配達のみ対応と重々お伝えください」
「わかりましまうまー」
その語尾、言いにくくはないですかね?
まぁいいです。
なんだかんだ貴族の方がここまで来られると迷惑極まりありません。
この前の暴露や、お客様の割り込みもよくあることです。
でしたら新たな問題が起きないよう、パーティー当日まではフェアリーイーツのみにしていただいた方が助かります。
私はフェアリーイーツの出発を見送ると、待機組の妖精たちが私に声をかけてきました。
「オーナー売上いかが?」
「そうですね……あの行列ができていた時ほどとはいきませんが、フェアリーイーツもその前の時に比べると、少しだけ売上上がりましたかね」
「やったー」
「お店も潰れない?」
「パーティーまでは何とか持つでしょう。」
まぁ、いつまた噂が広まるかもわからないので、綱渡り状態ですけどね。
そんな話をしていると、今度は入れ替わるようにアンナが厨房に入ってきました。
「オーナー、今少しお時間いいですか?」
様子を見るに何か話があるようです。
「私の方は別に構いませんけど……お店の方はどうしたんです?」
「今ちょうどお客様いなくなりましたので。」
「あらー」
ある程度人が来てくださるようになりましたが……やはり前みたいにずっと行列……というわけにはいかないですね。
遠くから買いに来てくれる人が多いので、昼間に集中して昼の2時ごろにはお客様が引いてしまいます。
もちろん泊まりでくる人もいるのですが……そういう方々は閉店間際にいらっしゃるので、それまでの間時間がかかってしまいます。
そうなると、会計担当のアンナはやることがなくなってしまいます。
「でも、いつお客様が来てもいいように監視を……」
「お話は秒で終わります、その間、妖精ちゃんたちも中の様子を見てくれてますので」
秒で終わる話とは一体何なのでしょうか。
まぁ目が本気ですし、話くらい聞いてもいいでしょう。
「何ですか?」
「あのー……私にもお菓子、作らせてもらえませんか!?」
最初のコメントを投稿しよう!