忌み地の怪

12/14
前へ
/14ページ
次へ
私達の周囲を取り囲みつつ、まるで絶対逃さないとでもいうかの様に……頭上を覆い隠すかの如く上半身を伸ばしてくる入院着の人影達。 すると、私達を見下ろしたままの彼らが、突然大きな声を上げる。 そうして、半ば叫ぶ様に声を上げながら、とても愉快そうに笑い出したではないか。 その余りに不気味で甲高い声に、一瞬耳を押さえ、その場に立ち(すく)む私達。 一方、大声で笑う彼らの口からは、よく分からない……苔みたいな色の液体が、ゴボゴボと溢れ出して来て――。 苔色の液体を吐き出し……周囲に飛び散らせ、蒔き散らしながら笑い続ける人影達の姿は、正直、正視に耐えないものであった。 私達は、その液体がかからないように――尚且つ、彼らに取り囲まれてしまわない様に、悲鳴を上げながら必死にもがく。 と、そこに、 「こら、お前達!そこで何をしてるんだ!」 不意に、男性の声が響き渡った。
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10人が本棚に入れています
本棚に追加