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――昔、あの土地に何も建たない事が大層気になっていた私は、近所の人や町長さん等様々な大人に、『あの土地が常に空き地な理由』を聞いてみた事がある。
だが、結局、誰も答えてくれずじまいだったのだ。
と言っても、何かを隠している風ではなく。
大人たち曰く、
“何を建ててもダメになってしまったので、仕方なく空き地にしているのだ”
とのことで。
どうやら本当に、誰も何も知らない様なのだ。
どんなにこの町に長く住んでいる大人でも、知っていたのは、『以前は何かが建っていた様だけれども、直ぐに取り壊されてしまった』という事実だけ。
例えば――。
以前はそこに戸建てのモデルハウスがあったのだが、なぜかすぐに、入居したばかりの住人が夜逃げしてしまった。
以降、公園、広場、マンション等様々な物を建ててみたそうだが、何を建てても、すぐに人が寄り付かなくなってしまうらしい。
マンションでは何度も住人が変わり、挙句の果てには九割が空き家になってしまったのだとか。
公園では、なぜか子供が寄り付かず、今と同じく空き地同然の状態だったらしい。
広場やドッグランが出来た時は、遊びに来た犬が嫌がって吠えまくり、ときにはダッシュで逃げ出した事まであったのだとか。
ちなみに、流行りのカフェが建った時も、数日でオーナーが逃げ出してしまったのだそうだ。
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