忌み地の怪

9/14
前へ
/14ページ
次へ
けれど、空き地に足を踏み入れた瞬間――。 まるで、内臓全部が内側からよく冷やした濃硫酸(のうりゅうさん)で溶かされている様な……そんな、恐ろしいくらいの吐き気と寒気が、私の胃や胸の中に同時に込み上げて来る。 (これはマズイ!一刻も早くここから脱出しなければ!) 幼かった私が、一瞬でそう理解するほどに――酷く壮絶なものであった、当時の吐き気や寒気。 しかし、私の役立たずな両足は……ガクガクとだらしなく震えるだけで、なんと全くもって動きやしないのだ。 足元はただの地面の筈なのに――。 なのに、まるで両足が底なし沼に捕らえられてしまったかのように、全く動かない――否、動かせないのである。 恐怖のあまり、助けを呼ぼうと周りの友人たちを見てみると……皆一様に私と同じ表情で。 気付くと私達は、夜の空き地の真ん中で、金縛りにあった様に動けなくなってしまい――それぞれ呆然と立ち尽くしたまま、表情だけで互いに助けを求め合っていた。
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10人が本棚に入れています
本棚に追加