136人が本棚に入れています
本棚に追加
「兄弟みたいで、友だちとはまた違う、近い関係。 ずっと切れない縁で繋がっているみたいなそれが恋愛になっちゃったら、いつか拗れてしまった挙げ句、二人の仲がバラバラになって繋がりがなくなってしまうのが怖くて、いやなんですよね、信也さんは」
「…」
その通りだ、と、信也は思う。
信晴や槇村、それに詩織のような、一目でその視線を惹きつける容姿をしていないと思っているものの、どういう訳か昔からモテてきた信也は、言い寄ってきた相手をなんの気なしに受け入れてきた過去があった。
信也にとっては『何気なく』とも。
相対する人たちにとっては己れの身を削いでまでも込めた、想いのひとひらであったのに。
その真心を真正面から受け止めようとしなかった不誠実でいい加減な態度で接してしまったせいで、相手の心を悪戯に惑わし、傷つけ。
想ってくれたことに対する『想い返し』をしたつもりが、自分が取った行動は軽薄で短絡的なものとして相手の目に映り、恋人と呼び合えるまでに至ったとしても長くは続かず、結果としていつも、告白してくれた相手に振られてしまうのだった。
…『モテ期』などという、そんな貴重な体験をしてきたというのに。
どうすれば相手の気持に寄り添えるのかが、分からず。
分からないまま…今に、至ってしまった。
.
最初のコメントを投稿しよう!