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岸野にLINEしたのは、その直後だ。
『岸野。悪いことは言わない。川瀬とは
付き合わない方がいい』
岸野がこれを読んで、素直に納得してくれる
とは思えなかったが、彼の元恋人としての
意地があった。
案の定、岸野から電話がかかってきた。
「もしもし」
「佐橋、どういうこと?何故、川瀬くんと
付き合わない方がいいの?」
「わからない?川瀬は岸野を傷つけるだけ
だよ。普通、あの場でキスしたって言う?」
「確かに驚いた。普通は言わない」
「でしょ?だから、やめておけって」
「さっき、川瀬くんと話してたのって、
そのことだけ?」
「どういう意味?」
「本当は、佐橋、今は彼女いるけど、
昔川瀬くんと何かあったんでしょ?」
「まだあんな噂気にしてるのか?それと
今回のこととは関係ないよ」
「じゃあ、さっきは何を話してたの?」
「岸野は大切な同期だから、お前の率直な
言葉で傷つけるなって言っただけだよ。
とりあえず」
「何?」
「川瀬は今夜はそこに戻ってこないから、
鍵かけて早く寝ろよ。疲れただろう?」
つとめて、岸野に優しく諭した。
「佐橋、お願いだから本当のことを」
ダメだ、これ以上は話せない。
俺はひとつ息をついて、
「川瀬は、お前が思っているような奴
じゃない。諦めろ。じゃあな」
と言って、電話を切った。
岸野に対し、嫉妬の感情が渦巻いていた。
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