本編

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「で?俺と岸野に話って何よ?」 ボックスの狭い席に座り、佐橋が息をついた。 「その前に、佐橋。キミの話を岸野くんに してもいいかな?」 「あのこと?まあ、もう過去の話だし、 構わないよ」 「岸野くん、入社早々、僕と佐橋は ちょっとした噂を立てられたんだけど、 半分嘘で半分本当なんだ」 「どういうこと?」 「佐橋に告白されて、少し努力して 付き合いを進めようとした時期があった。 一緒に帰ったし、会社外で食事したことも あった」 「ホテルの食べ放題にも、行ったよね」 佐橋が、彼の言葉を補足した。 「じゃあ、ホテルから出てきたっていうのは」 「たぶん、それ。尾鰭がついて、ラブホテル から出てきた、になっちゃったけどさ。 まあとにかく、少し距離が近づいた時期が あったってことです。はい」 「‥‥もちろん、あの、キスとかも」 「いや、してない」 「岸野、安心して。当時、俺は川瀬が手を 出してこなかったことにイライラしてたから」 「ああ、そうですか」 「そうこうしているうちに、佐橋に彼女が できて。僕は振られたという訳です」 「佐橋は、彼女を本当に大切にしてる。 でもそれって、当時は無理してたってこと? それとも今の彼女と当時の彼女は違う人?」 「同じ人だよ。確かに、彼女と付き合い 始めた時は、川瀬の代わりにしてたことも あったけど、今は彼女が大好きだよ」
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