8人が本棚に入れています
本棚に追加
「川瀬、もしかして他に好きな人が
いるんじゃないの?」
付き合って3ヶ月ほど経ったある日、
佐橋からそう訊かれ、また嘘をついた。
「いないよ。何でそんなこと聞くの?」
納得いかない。
佐橋の表情からは、そう読みとれた。
少し経って、大学の同級生だった女性に
告白されたので別れて欲しいと佐橋に
言われて、思わず安堵の笑みが漏れた。
「そうかごめんな」
そう言いながら、僕はいったい何をして
いるんだろうと思っていた。
佐橋は別れ際、
自分に嘘をつく癖は止めろと言った。
気づかれていたことは驚かなかった。
彼のことを思い浮かべていた。
彼は、こんな僕をどう思うんだろうと。
僕の本性を知ったら。
それが怖くて、なかなか踏み出すことが
できなかった。
最初のコメントを投稿しよう!