本編

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「川瀬くんは、彼女いないの?」 彼の耳元に囁くと、 「今はいないよ。岸野くんは?」 と彼に囁き返され、首を振った。 「あーそこ、また内緒話して」 秋津に指摘され、彼と顔を見合わせて笑う。 「川瀬と岸野ってさあ」 佐橋が眼力鋭く、彼と僕を見つめながら、 怪しいんだよね‥‥と呟いた。 「何が」 彼がビールを一口飲み、佐橋に微笑む。 「本当は、2人デキてるんじゃないの?」 「はあ?」 僕は笑いながら、佐橋の空いたグラスを 受け取り、ハイボールを作り始めた。 「別にいいよ。俺たちは味方だし」 秋津が頷き、吉川は彼の肩を叩いた。 「何があっても、俺は応援するぞ?川瀬」 「はいはい、どうも」 彼とは部署は違うが、同じフロアで 働いている。 3つ離れた机の列、時折彼のハスキーな 甘い声が聞こえて、心地よく感じている ことは内緒だ。 誰にも知られたくない、この気持ち。 たとえ、彼らに指摘されても 素直に頷く訳にはいかない。
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