本編

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3人が部屋を出た後、残された彼と僕は、 手早くテーブルの片付けをした。 テーブルにたこ焼き器を置き振り返ると、 調理台で卵を割り、ボウルにたこ焼きの 材料を混ぜている彼のそばに立った。 「何か手伝うことある?」 「大丈夫。ありがとう‥‥あ、岸野くん」 「ん?」 真顔になった彼が、僕の頬に人差し指で 触れた。 「ごめん、まつ毛を取ろうと思ったら、 粉が頬についちゃった」 再び彼に頬を触られ、 ドキドキしながら彼と見つめ合う。 どん、と音を立てて、 彼が調理台にボウルを置いた。 「岸野くん」 「あ」 彼の名前を呼ぶ声は、そこで途切れた。 彼の腕に包まれていた。 彼のまつ毛が僕の頬に触れるくらいの距離。 「顔、上げて」 言われるまま、僅かに顎を上げた僕は、 次の瞬間、彼に唇を奪われていた。 激しく、息が止まりそうなくらいのキス。 唾液の音が生々しく台所に響き、 彼にしがみついた僕は、彼と深いキスを 交わし続けた。 彼の唇が離れ、余韻に浸っていた僕に、 彼はぎこちなく笑って言った。
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