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「で?俺と岸野に話って何よ?」
息をついて、彼に訊いた。
「その前に、佐橋。キミの話を岸野くんにして
もいいかな?」
「あのこと?まあ、もう過去の話だし、
構わないよ」
岸野が知らない、俺と彼の過去だ。
「岸野くん、入社早々、僕と佐橋は
ちょっとした噂を立てられたんだけど、
半分嘘で半分本当なんだ」
「どういうこと?」
「佐橋に告白されて、少し努力して
付き合いを進めようとした時期があった。
一緒に帰ったし、会社外で食事したことも
あった」
「ホテルの食べ放題にも、行ったよね」
半分諦めに似た気持ちで、補足した。
「じゃあ、ホテルから出てきたっていうのは」
「たぶん、それ。尾鰭がついて、ラブホテル
から出てきた、になっちゃったけどさ。
まあとにかく、少し距離が近づいた時期が
あったってことです。はい」
「‥‥もちろん、あの、キスとかも」
「いや、してない」
「岸野、安心して。当時、俺は川瀬が手を
出してこなかったことにイライラしてた
から」
彼も初耳だったので、隣で驚いていた。
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