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「そうこうしているうちに、佐橋に彼女が
できて。僕は振られたという訳です」
「佐橋は、彼女を本当に大切にしてる。
でもそれって、当時は無理してたってこと?
それとも今の彼女と当時の彼女は違う人?」
「同じ人だよ。確かに、彼女と付き合い
始めた時は、川瀬の代わりにしてたことも
あったけど、今は彼女が大好きだよ」
嘘ではなかった。穏やかな恋をしている。
「そうか。それなら。で、佐橋が川瀬くんを
僕に相応しくないと思う理由は?」
「付き合ってる当時から、こいつ嘘つきだって
気づいてたから。好きな奴がいるんだろう
って問い詰めても、いないって嘘ついて」
岸野に訊かれたのに、彼に向かって答えた。
「言える訳ないだろ?同期の中で、三角関係に
なっちまう」
彼も、俺に向かって答えた。
やっと白状したな、本心を。
「え?川瀬くんには、佐橋と付き合ってる
最中に、好きな人がいたの?‥‥で、同期?」
「つまり、岸野。お前のことだよ。川瀬は、
入社以来、お前に片想いしてたの」
入社以来、というのは盛った話だったはず
だったが、彼が否定することはなかった。
「言われちゃったか。そうです、僕は
岸野くんに片想いしてました」
「‥‥嬉しいけど、複雑な心境。もっと早く
から、両想いだったってことだよね?
でもそれなら、僕たちのこと応援してよ。
何故まだ反対するの?」
まあそうだろうね、と苦笑いした。
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