本編

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そんなこと言ったって。 スマホを片手に、ぼんやり思った。 同期として初めて顔を合わせてから ずっと彼に片想いをしていた。 どこがいいという明確な理由はなかった。 この人だという予感で、恋をした。 それから数年かかって、スムーズに アイコンタクトができるようになった。 今夜彼とキスをして、好きだと言われて、 これ以上の幸せはないと思った。 それなのに。 彼と佐橋の噂は、入社早々にあった。 フロアで抱き合っていただの、 ラブホテルから出てきただの、 酷い内容だった。 もちろん信じたくはない。 しかし佐橋は僕の知らない彼の人となりを 知った上で僕に付き合いを止めろと 言っていそうな気もした。 「どうすりゃいいんだよ」 途方に暮れた僕は、早々にシャワーを浴び、 ベッドに潜り込んだ。 恋人になったはずの彼からの連絡を 待ったが、その日も次の日も来ることは なかった。
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