48人が本棚に入れています
本棚に追加
【20】ダンジョン探索再開と女王からのおつかい(後)
「なぁキア。お前の見立てで今回は何階層までならアイツら耐えれそうだと思う?」
「んー……そうですね。
現状この65階層から一気に雑魚敵のレベルも上がりましたし、70階層の階層ボスは少し手強い可能性はありますよね」
「ああ。俺もそう思ってた。
多分マイムたちでは倒せんだろうな。
と言ってもアイツらには出来る限りやってもらわないと、今後が厳しくなる。
だけど別に着いて来れないなら着いて来なくても今後は問題ない。
そもそも俺とお前だけで楽しむ予定だったからね」
「そうですね。
彼らには彼らの限界値が何れ来るでしょうし、来た段階で能力に見合った職務を任せれば良いだけです」
「だな。
もう地上でも必要とされる奴らになってるし、それはそれで需要もあるだろう」
と、そんな話をキアとしているとマイムが不意に話しかけて来た。
「ねぇねぇザハル。
女王から依頼されたレジェンダだっけ?
あれってダンジョンにあるものなの?
話では魔物に盗まれたって話だったでしょ?
その魔物って魔王軍じゃない?
だって、そもそもダンジョンの魔物はダンジョンから出れないんだよ」
「俺も同じことを思ってるんだよ。
ただ、少ないながらの可能性として考えられるのは、50階層のボスを覚えてるか?」
「もちろん覚えてるよ。
反則級に強かったよね」
「そう。アイツはどう考えてもあの階層のボスじゃない。
魔王軍、いや、もっと別の勢力の幹部だったようだ。
俺が思うに、魔王軍はそこまで強くない。
あれは別の勢力の強者で、もしかすると奪ったのは、その勢力なのではないかと思ったりもするんだよ」
「無くはないかも。
昔、おじいちゃんに聞いたことがある言い伝えがあるんだ」
“魔王でも太刀打ちできない力があり、勇者では相手にならない強大な勢力がある。
絶対に手を出すな。手を出せば滅びが約束されるだろう”
「あ、それ俺も聞いたことがあるぞ」
「うん。私も」
「なんだそれ。なに?魔物の中では周知の話なの?」
「多分。
でも、どうなんだろう。
知ってる人間もいるんじゃないかな?
キアは知らなかったの?」
「神より伝え聞いていたことはありましたが、そこまで詳しくは」
「だとしたら、俺の仮説は間違いなさそうだな。
その勢力がレジェンダを強奪した奴らかは知らんが、面倒な勢力が存在するって事は分かった。
もしその勢力と戦うことになったら、魔物のお前たちは前線に出てくるな」
「でも、ザハルが敵対するなら、僕たちは……」
「いいから。
これに関しては、不明なことが多すぎる。
お前たちは関わるな」
「わかったよ……」
少ししょんぼりしたマイムたちであったが、これもアイツらの為でもある。
敵対してもアイツ等には何もメリットがないだろう。
最悪、命の危険だってある。
実際グリースは死んだ。
俺はこの世界に来て確かにありえない強さを持っている。
だけどさ、元々はただのサラリーマン。
至って普通の人間だったんだよ。
元は魔物とはいえ、今では大切な友達であり仲間でもある彼らの無用な死は見たくない。
戦争だって最初は吐きそうになったよ。
だってそうだろ?
目の前で大量に人が死んでいくんだぜ。
そして大量の人が俺を殺す為に蛆のように湧いて来る。
それを大量に殺す。
気が狂いそうになるぜ、普通なら。
精神耐性スキルがMAXじゃなきゃ、今頃俺も廃人になってただろうよ。
クソ!俺はもっとのんびり生活するつもりだったのによ。
今でも王国がどうなろうと本当に知ったことじゃないと思ってる。
だけどさ、一応今の俺の妻はさ、この国の女王なんだよね。
王国の為に!ではない。
レーニア、妻の為に。俺が王国に留まる理由なんて、そんなもんだ。
なんでこんな話になっちまったのか……自分語りなんて性に合わねーな。
ただ、少し愚痴りたくなっただけだ。
「少しの愚痴がガッツリな長文でしたね!主!」
「わっ!お前聞いてたのかよ!」
「当然ですよ。だって私は主の脳内に住んでるシステムAIですよ。
ちなみに今まで主がしていた、過去の自分語りも全て聞いてましたよ」
「ま、まぁでもそうなるよな……
便利なのか不便なのか際どいな、お前の存在って」
「え?スーパーウルトラメガトン便利でしょう」
「メガトンってお前……久しく聞いてないぞ、その言語」
「マンモスの方が流行でしたかね?
私の時代はマンモス◯◯って言う人が居たので」
「それ、一部な!
その人も人生マンモス狂っちまったけどな!」
「そうなんですねー。
白いウ◯ギでしたっけ?」
「アオね!
もうこの話題辞めよ!
俺、めっちゃファンだったんだから!」
「それはそうと主、どうでもいい話をしすぎてる間に着いちゃいましたね。
70階層のボス部屋」
「そうだね。着いちゃったね。
そんでこれ、多分強いよな?」
「ですね。
空気が変わりましたね」
「今回のボスに関して、マイムたちは先に仕掛けるな。
なんか、きな臭い」
「OK」
「キア、一応皆のために準備だけしといてくれ。
俺が先行する」
「了解しました」
「さて、行きますか」
久々に出会う、強そうなボスに俺は内心でも楽しみを隠しきれなくなっていた。
俺はこの戦いにおいて1つだけ試してみたいことを試そうと考えている。
現状のレベルで全力戦闘を!
最初のコメントを投稿しよう!