3人が本棚に入れています
本棚に追加
/4ページ
「当然だけど、この作戦は絶対に秘密だからな。誰にも言うなよ。で、ヒロ。やれるよな?」
僕は体育座りをあぐらに変えて、「うん、まあ」とキレの悪い声を返した。
「なんだよ、勢いないな。大丈夫か、そんなので。ちょっとねえちゃんで練習してみろ」
「ええ、はずかしいよ」
姉貴の尻に敷かれていたクッションが、ぼへんと僕の頭で音をたてた。
「なーに言ってんだよ。てれてばっかいるから、高一になっても彼女できないんだぞ」
姉貴は仁王立ちだ。上下を黒のスウェットでコーデした姿は、キュートな小悪魔ちゃんみたい。あるいは、全身ねずみ色の僕を狩る黒猫。
「ヒロはさ、けっこうイケてるんだから、黙ってちゃもったいないって」
姉貴の顔がぐっと寄る。うーん、いい匂い。姉貴こそ、なかなかイケてますよー。高三になって、ますますきれいになったよね。
パッツンな前髪の下からの僕をじっと見つめる目と、スースー空気の通る鼻に血のつながりを感じる。
「あのな、ヒロ。こういうのは慣れなんだって。女の子に、『好きです』くらい平気で言えるようになれよ」
晩飯を食い終わってすぐ、僕は姉貴の部屋に呼び出された。なんだろうと耳を傾けていたら、えらいことになっていた。
ねえ姉貴。弟の性格知ってるでしょ。シャイで内気でおとなしい僕に、ムチャ言ってるのわかってるよね。
「ほら、ヒロも立て。練習するぞ」
腰に手を当てて背中をピンと伸ばし、姉貴はやる気満々。
頭ひとつほど僕のほうが背は高いけど、姉貴の前に出ると自分がちっぽけに思える。これって、自信がないからなんだろうな。
「じゃあいくよ。あの、僕、マミさんのことが好きです。つきあってください」
うっひゃあ、耳が熱いや。頭に血がどんどんのぼってくる。
「え……、あ、あら、そうきたの……」
姉貴まで顔がまっ赤になっちゃった。かわいい。
最初のコメントを投稿しよう!