恋愛略奪フォーメーション

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「当然だけど、この作戦は絶対に秘密だからな。誰にも言うなよ。で、ヒロ。やれるよな?」  僕は体育座りをあぐらに変えて、「うん、まあ」とキレの悪い声を返した。 「なんだよ、勢いないな。大丈夫か、そんなので。ちょっとねえちゃんで練習してみろ」 「ええ、はずかしいよ」  姉貴の尻に敷かれていたクッションが、ぼへんと僕の頭で音をたてた。 「なーに言ってんだよ。てれてばっかいるから、高一になっても彼女できないんだぞ」  姉貴は仁王立ちだ。上下を黒のスウェットでコーデした姿は、キュートな小悪魔ちゃんみたい。あるいは、全身ねずみ色の僕を狩る黒猫。 「ヒロはさ、けっこうイケてるんだから、黙ってちゃもったいないって」  姉貴の顔がぐっと寄る。うーん、いい匂い。姉貴こそ、なかなかイケてますよー。高三になって、ますますきれいになったよね。  パッツンな前髪の下からの僕をじっと見つめる目と、スースー空気の通る鼻に血のつながりを感じる。 「あのな、ヒロ。こういうのは慣れなんだって。女の子に、『好きです』くらい平気で言えるようになれよ」  晩飯を食い終わってすぐ、僕は姉貴の部屋に呼び出された。なんだろうと耳を傾けていたら、えらいことになっていた。  ねえ姉貴。弟の性格知ってるでしょ。シャイで内気でおとなしい僕に、ムチャ言ってるのわかってるよね。 「ほら、ヒロも立て。練習するぞ」  腰に手を当てて背中をピンと伸ばし、姉貴はやる気満々。  頭ひとつほど僕のほうが背は高いけど、姉貴の前に出ると自分がちっぽけに思える。これって、自信がないからなんだろうな。 「じゃあいくよ。あの、僕、マミさんのことが好きです。つきあってください」  うっひゃあ、耳が熱いや。頭に血がどんどんのぼってくる。 「え……、あ、あら、そうきたの……」  姉貴まで顔がまっ赤になっちゃった。かわいい。
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