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「ヒ、ヒロさ。名前のところは、ねえちゃんじゃなくていいから」
「あ、そうなの」
「そうだよ。告白の相手は、ねえちゃんと同じクラスのキララなんだから。ヒロはさ、押しの強い女に弱いとこあるだろ。キララとお似合いだったりしてな」
なーんか、むかしのお見合いみたいだな。本人の意思よりもまわりの見立て。信頼できる人から異性を紹介されて結婚しちゃう。
姉貴はこの世で僕が一番信頼している人だ。姉貴の勧めなら、キララさんに告白するほかに僕の選択肢はないよね。
「じゃあ、やり直すよ。僕、キ、キ、キララさんのことが、す、好きです。つきあってくらはい」
「だーめー。『くらはい』ってなんだよー。ねえちゃんはな、ヒロがシャキッとなるのを心からの願ってんだぞ。根性出せ。へにゃへにゃすんな」
ビッシー。愛のムチが胸の奥にキマる。
「キララはな、あした、リョウスケに告白する。その前に、横からわりこもうって作戦なんだ。念入りに練習しとかないと、上手くいかないぞ」
姉貴によると、キララさんは恋に恋する女で、告白したりされたりが大好物。自分の恋の戦果を、指折り数えるのが趣味だそうだ。そこに、僕のすべりこむ余地があるってのが、姉貴の見通しだ。
キララさんは何日も前から、「あたしー、リョウスケのー、誕生日にー、告白するのー」と大声でくり返しているそうだ。
ここで僕の疑問。
どうして、女は男の誕生日に告白したがるんだろう。記念すべき日だから? いつだっていいと思うんだけどなあ。女ってわかんないや。
リョウスケさんは、キララさんが大騒ぎしているのを知っていて、刑の執行を待つ囚人みたいに、頬がげっそりそげているらしい。なんとも気の毒な話だ。
さらに姉貴が語るには、キララさんの押しの強さは尋常ではないそうだ。
これでかわいかったり、美人さんだったりすれば、ビシバシこられるのが好きな男には絶好の彼女なんだけど、残念なことにキララさんの顔面は美貌よりも迫力優先って感じらしい。
リョウスケさんには彼女がいなくて、断る口実がない。
好みじゃないからごめんなさい、と言えるほどハートも強くない。
てことは、きっとキララさんに押し切られてしまう。
となると、二人はくっついちゃって、僕の入りこむ隙はなくなる。チャンスもなくなる。
と、姉貴は流れるように解説してくれた。はー、すごい読みだよね。尊敬するよ。
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