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VSクロマドウシクズレ&イソギン①
勇者と格闘家が棺桶になり、そのせいもあって教会で俺の下半身が、煩悩にまみれた神父の餌食に。
そうやって好色な神父に弄ばれるのは二度と御免で「もう死なないで」と懇願した甲斐があった。
ベロリンチョにでくわしても、前のように勇者は逆上せず、突進しようとする格闘家を「この前みたいに、戦闘地域に二人を取りのこして、不安にさせるのか」と諭してくれたから。
戦闘の要の二人が頭に血を上らせなければ、レベル能力、装備がエリアごとの必要基準より、ずっと上回る状態でいるから負け知らず。
ということも、なかった。
力が劣る分、知恵をこらし小細工をする魔物もいる。
その点、とくに厄介なのが「クロマドウシクズレ」だった。
もとは人間の黒魔導師。
じつは彼らには魔力を扱うだけ、邪悪なものに惹かれる危うさがある。
「もっと我らのように自由を、そして絶大なる力をほしくはないか」と誰とも知れない囁きに四六時中、つきまとわれるのだとか。
その幻聴のようなものに惑わされていき、落ちぶれてしまった、なれの果てが「黒魔導師崩れ」というわけ。
黒い煙のような体に、赤い目を光らせ、紫のローブを羽織ったさまは、人の原型のない立派な魔物なれど、人としての記憶や思考能力は残ったまま。
そこらの魔物より、よほど賢く、機転が利き、人の心理を読んで、裏をかいたり、弱みにつけこんだり、痛いところをつけるから、手ごわいのだ。
そうしてターゲットを分析、時間と手間をかけ策略を練りに練り、準備万端に挑んでくることが、ほとんど。
ほかの魔物のように、戦闘地域でばったりうっかり遭遇し、突発的な戦闘にもつれることはない。
だから、必ずターゲット以上の数をそろえ、サポートに適した魔物をはべらせるのが常。
今回は「イソギン」。
見た目はイソギンチャク。
人の顔くらいのサイズで、自然界の一般的のより巨大だが、一見、かわいらしい。
魔物でも、イソギンのように植物的なヤツはぼうっとしていて、あまり意思を持って行動せず、攻撃的でもない。
ただ、癖のある癖がある。
触手にジャストフィットする穴があると、突っこまずにいられなく、いつまでも飽きずに抜き差しするという。
でもって、イソギンお好みの穴が、人の耳や鼻、口だったりするのだ。
触手の攻撃の威力はデコピン程度ながら、付属効果「痺れ」が確率高く発動。
「痺れ」は時間経過では治らないし、その間、防御力が下がるあたり、致命的でなくても絶妙に迷惑。
といって、いくら人を痺れさせるのを得意としても、ザコ中のザコなのに変わりはない。
そんなイソギンをサポート役として抜擢したクロマドウシクズレは、さすが小賢しい元人間。
まんまと俺たちを「げえ・・・」と戦意喪失させたもので。
というのも、クロマドウシクズレの周りには、十体ほどのイソギンが触手を揺らめかして、たむろしていたから。
踊り子の蹴り一発でも倒せるイソギンが、十体いようと脅威ではない。
が、次から次と畳みかけるように触手を突っこんできたら、どうなるやら。
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