ⅤSクロマドウシクズレ&イソギン②

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ⅤSクロマドウシクズレ&イソギン②

「逃げたほうがいいのでは」と提言しようとしたが「我らに敵意のない無垢なイソギンをそそのかして、なんと卑劣な!」とときに魔物にも慈悲深い勇者が、俄然、クロマドウシクズレ目がけて突撃しやがって。 せめて、全体攻撃でイソギンをなぎはらってほしかったのに。 案の定、性急な剣のふるいは、よけられて、お次はクロマドウシクズレのターン。 魔法をかけて、イソギンすべてを透明に。 次の格闘家は全体攻撃をしたものの、透明になられたあとでは、三体しか倒せず。 つづけて白魔導師は一応、回避率を高める魔法をかけたとはいえ、連続してのイソギンの猛攻に、俺以外のヤツは、まんまと痺れてしまい。 あとはもう、悲惨なもので、みんな白目を剥いたまま、耳口鼻を触手でずぼずぼ。 そして、役立たずな踊り子、俺のターンに。 アイテムを使ったところで一人しか痺れを治すことができない。 いや、その前に触手を(打撃を加えて)外さないといけないが、悠長に二ターン使う暇はない。 俺がここで手を打たないと、あとに控えるイソギンの触手にやられて、全員、身動きとれなくなる。 痺れたまま、なす術なく、クロマドウシクズレの魔法で全滅するだろう。 「しかたない」と舌打ちして、アイテムを使用。 とはいえ痺れ用ではなく、技の効果発動率を高める木の実をがぶり。 森の大精霊を助けたときに頂いたもので、市場に出回っていなく、おそらく世界で一つだけのレアアイテムだ。 ふつう、こういうものはボス戦にとっておくものだが、コンティニューできるか知れない転生後の世界で、惜しんでいられない。 レアアイテムだけあって、使用してもターンは終了せずに、つづけて別行動ができる。 もちろん、攻撃力のない俺は、特攻をしないで、十八番の踊りを披露。 透明のイソギンに攻撃は当たりにくくても、踊りなどで視覚的に影響をもたらすことは有効。 しかも踊り子の技は、全体に向けてのものだし、低い発動率をアイテムで補えさえすれば・・・。 踊りきると、身動きせず見入っていたクロマドウシクズレに、透明のイソギンが一斉に襲いかかった。 まずは。とことん痺れさせて、あとは触手で蛸殴りにしているらしい。 攻撃力が微微たるイソギンにいくら殴られても、死にはしないだろうが、一方的に透明な触手でぼこぼこにされるさまは痛ましかったもので。 むごたらしく多勢に無勢でイジメられているか、リンチされているよう。 下僕扱いしていた魔物に足をすくわれるとは。 けしかけた張本人ながら、同情しつつ、あっという間にターンが回ってきたのに、踊り子ならではの特殊能力を発揮し、渾身の「とんずら」を。 「とんずら」は仲間がどんな状態だろうと、全員をつれて戦場離脱ができる。 戦闘にあまり役に立たない踊り子にして、逃げ足だけは早いとのことで、本領発揮率はほぼ十割。 誇れないような微妙な必勝技なれど、こうした、いざというときでも、空ぶりすることはなかった。 ある意味、居たたまれない、イソギンとクロマドウシクズレの修羅場から、とっととおさらば。 「とんずら」できる範囲を超え、地面に倒れた三人にアイテムを使用。 痺れが治っても、まだ体に力が入らないのを「『誘惑』の効果がなくなる前に早く!」と三人の尻を叩きながら、戦闘地域からの離脱も急いだもので。
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