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ⅤS神父①
ベロリンチョの一件があって、勇者と格闘家はすこし調子をおかしくした。
ベロリンチョ(ノーマル)と対戦するとき、目の色を変えて、闘牛のように「うおおおおおおお!」と襲撃するのだ。
一撃で倒せる雑魚なのに。
ボス戦に挑むほどに大奮起して。
「男だからとか関係ないよ!魔物に仲間が傷つけられたら、怒るのは当たり前だし、過剰反応するのもしかたないって!」
勇者に劣らず、お人好しな白魔導師が的外れなフォローをしてくれたから、よかったものを。
「いい加減、ばれるぞ!」とやきもき、はらはらしていた矢先、やらかしやがった。
まあ、ある意味、秘密は守られたというか。
死人になんとやらというか。
相変わらず必要以上にヒートアップして、ベロリンチョに突撃した二人が、カウンターで舐められて、付属効果の「混乱」が発動。
混乱したまま、お互いを目の敵にして、ガチバトル勃発。
戦闘能力が高い二人だけに、相打ちでお陀仏。
戦闘に巻きこまれてベロリンチョも葬られ、非戦闘要員の俺と白魔導師は助かったけど。
いや、助かったけども。
砂漠のど真ん中。
町まで徒歩半日かかる場所に、棺桶二つと取りのこされるなんて。
この世界は、俺が生まれる前に流行った2D、ドッド絵のRPG。
今どきのゲームは、アイテムや魔法ひとつで、ほいほい蘇生できるのが、ここでは死んだと同時に棺桶に入るから、手だしができない。
生きのこったヤツが棺桶を引きずっていき、町の教会でお金を払い、蘇生してもらうしかない。
古いゲームのしくみは、俺が転生したあとも健在。
で、非戦闘要員でありお笑い要員的な踊り子たる俺はよく棺桶におさまっていた。
なにせ、基本の防御力が低いし、踊りの邪魔になるから、ごてごてに防具を身に着けられない。
「あ、こいつ雑魚だ」と一目瞭然に魔物に舐められ、さらに装束が派手となれば、尚のこと目をつけられやすいから。
一方であとの三人は、冒険者として優秀。
行く先々で、必要な一定レベル能力を上回った状態でいて、危なげなく戦闘もダンジョン攻略も難なくこなす。
もし、このゲームをプレイしているヤツがいるなら、無鉄砲せっかちタイプではなく、慎重な安パイ主義タイプだろう。
時間をかけるのを厭わず、戦闘やサブミッションをしまくって経験値とお金を稼ぎまくり。
必要以上のレベル能力、装備を会得し、先行きの不安を打ち消してから、ダンジョンに臨んだり、つぎのエリアに移るという。
そうやって盤石な態勢を整えつつ進行をしてきたので、俺以外、死んだことがない。
すくなくとも、俺が転生してから、俺以外、死にかけたこともない。
なので、白魔導師と棺桶を二つ前にして、途方に暮れるのは初めて。
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