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「…お腹空いた」
なんとなく呟いた。
本当は空腹なんてどうでも良かったが、他に何も考えたくなかったのかもしれない…
焼けた焦げた柱にもたれて、まだ幼い少年だった俺は蹲っていた。
ここには俺の家があった場所だ。
だが、もう原型を留めていない。
視線を少し上げると、無惨に破壊された村の光景が広がっていた。
昨日までの穏やかな村の風景がまるで嘘のようだ。
村の所々に死体が転がっている。
俺以外の村人は全員死んだ。
一瞬の出来事だった…
朝の食事を終え、畑仕事を手伝おうと父さんと家の外へ出た瞬間、大きなドラゴンが村に降りたってきたのだ。
北の山の主であるドラゴン。
そして、気がついた頃にはドラゴンはいなくなり、村はこの悲惨な光景へと変わっていた。
父さんも母さんも…妹や弟もドラゴンの火に焼かれてしまった…
幼馴染のエレンも見つけた時には亡骸となっていた…
俺以外の村人全員がドラゴンに殺されたのだ。
しかし、家族や村人たちを奪われた怒りよりも恐怖が俺を支配していた…
いつ、またドラゴンが来るか分からない…
…もし、生き残った俺を見たら、次は容赦なく殺されるだろう。
そう思うと、夜になってもこの場から震えて動けなかった。
両手で耳を塞いだまま、ひたすら身を潜める。
やがて、眠気に襲われて寝てしまい、目が覚めたら朝になっていた。
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