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そして、ようやく空腹を感じたのだ。
「…どうしよう。何か食べなきゃ…」
焼かれたこの村に食べられる物がはたしてあるのだろうか…?
畑も跡形もなく崩壊していた。
もしかしたら、土の中に何か食べられる物が埋まっているかもしれない。
だけど、身体が動かなかった…
身体は食べ物を欲していても、精神がそれを求めていない…
恐怖と悲しみと絶望感から、俺の身体はその場から動けずにいたんだ。
…それから、数日が経った。
俺は相変わらず焦げた柱にもたれたままだ。
途中、何度か雨が降った。
冷たい風が俺の身体を何度も冷やした。
そして、暖かい日差しがこの無気力の顔を照らす頃、俺の身体は自ずと地面に倒れ込んだ。
座ることすらままならないくらい、俺の身体は衰弱しきっていた。
そっと、目を瞑る。
…ああ、これで俺も父さんや母さん…妹と弟…そして、密かに恋心を抱いていたエレンのあとを追いかけることが出来る…良かった。
その時、地面に付けた顔に何かが当たったのを感じる。
ゆっくりと目を開けると、目の前には大きな黄緑色の果実があった。
それも二つも…
本能が俺の身体を動かす。
気がつくと地面に這いつくばったまま、その果実を食べ始める。
急に食したためか、胃が受けつけずに何度か吐いた。
だけど、懲りずにその果実にかぶりつく。
果実にはたっぷりの水分が含まれていて、今の衰弱した俺の身体にはぴったりだ。
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