月があるかぎり

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 美月が倒れた原因は脳出血だった。救急車で病院に搬送されたが、手の施しようがない状況で、彼女は静かに息を引き取った。  葬式を終え、心の整理をつけた芽衣は学校に行くようになった。以前のような日常に戻りつつあったが、感情は暗くて深い海の底を漂っているようだった。枯れるほど流した涙は、いまだ尽きることなく、美月を想うと視界がにじむ。  そんな状態でする慣れない家事は、時間がかかって仕方がない。料理は焦がすし、洗濯は洗剤を入れ忘れる。 「あー、芽衣に比べて俺は全然ダメダメだー」  家事を終えて、ソファに横たわり目を閉じる。  独り言がやけに大きく聞こえた。 『そんなことない』  ふいに声が聞こえ、目を開けて天井を見る。周囲を注意深く見渡し、物音がしないか耳を澄ませる。 「わ!」  警戒心から大声を出してみた。 「はは、誰もいるわけないよな」  子供のようにおびえた自分が恥ずかしくなった。 『いるわよ』  また聞こえた。キョロキョロと部屋全体を見まわすが誰もいない。 「わー!」  さっきより大きな声を出してみる。 『大声出さないで』 「わ、わ、わああああ!!」 『うるさ~い!』  この日から俺に、美月の声が聞こえるようになった。
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