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たけし君は、クラスでは、なんでも一番で元気な小学2年生。それはそれはクラスでは、人気者でした。
ある日、一人の男の子の転校生がやってきました。名前も同じ、タケシで、体はたけし君より少し大きな子でした。
しかも、たけし君は、そのタケシに勉強も運動も何をしてもかないません。一番の座をとられてしまったのです。たけし君は、それがくやしくてくやしくてしかたありませんでした。
先生の質問も、たけし君より先にその子が答えてしまう。タケシはなんでも知っているのです。かけっこも、やっぱりその子が少しだけ早い。たけし君はその子を追い抜こうと、必死に勉強し、一生懸命に体育の練習もしました。
でも、たけし君がどんなに頑張っても、いや、頑張れば頑張るほど、タケシはどんどん先をいきます。まったく追い付けないのです。
女の子たちは、すっかりタケシに夢中です。
たけし君は、タケシの秘密が知りたくなりました。
ある日たけし君は学校帰りに、タケシがどこに住んでいるのつきとめようと、後をつけて行きました。するとたけし君の家と同じ方向でした。
そして、たけし君がびっくりしていると、タケシはたけし君の家の玄関にいました。
そして、その時。
「やぁ、たけし君!」
と言って くるりとふりむきました。
「たけし君、僕は君のことはなんでも知ってるよ。」
「なんで僕のことを?君はどうして勉強も運動もそんなに良くできるの。」
「僕はほんとは君より一つ年上なんだ。ごめんね」
「それじゃ、どうして3年生じゃないの?」
「僕も、3年生になりたかったよ。2年生の終わりに交通事故に合っちゃって」
その子は、たけし君の顔をじっくり見つめると、最後にぽつりと言いました。
「君にはあと一年あるから、友達とたくさん遊んでたくさん勉強もして、お父さんお母さんとも仲良くするんだよ。」
そう言うと、玄関先から急にいなくなりました。たけし君は急いで家のまわりをさがしましたが、とうとう見つかりませんでした。
その子はそれきり学校に来ることはありませんでした。
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